ミニストップ有害図書追放 販売中止、8割が賛同
コンビニエンスストアのミニストップを傘下に持つ流通大手イオン(本社・千葉市)は、今年1月からすべての小売店で成人向け雑誌(成人誌)の取り扱いを中止し、有害図書の追放に一役買っている。一部の店で販売中止を先行させたミニストップに寄せられたのは賛意を示すメッセージがほとんど。これに対しセブン―イレブンなど他の大手コンビニは、今のところ成人誌の扱いは緩やかだが、消費者の動向に無関心でいられないようだ。(編集委員・片上晴彦)
野放し「信じられない」
東京五輪、訪日客も意識
「約8割が女性を中心に賛成、約1割が反対の意見でした」。成人誌や各都道府県の条例で定めた「有害図書」の店頭からの一掃後、ミニストップ本社には数多くの意見が寄せられたが好意的なものが続く。
「賛同する意見の中には『トイレを子供が利用する際に子供の目に入ることが不快だった』という母親の声もありました」
女性がコンビニを利用する機会が増えてきており、今回の決定は、女性にとってより利用しやすい店舗を実現するためのものだった。成人誌の販売中止から2カ月だが、わが国ではかつてない試みであるだけに、消費者たちの声に広報担当者も胸をなで下ろしているようだ。
ミニストップに呼応して、1月からイオン傘下のスーパーや書店、ドラッグストア計7000店舗でも成人誌販売を中止した。同社広報の栗本定幸さんは「成人雑誌が置いてあって行きづらいという声が多かった。品揃(ぞろ)えの一環として販売を見合わせた」と、ファミリー層を対象にした業態の務めであることを強調する。
さらに2020年東京五輪・パラリンピックに向け増え続ける訪日外国人を意識した。「街を歩いていても店頭に成人雑誌を目にすることがあり、信じられないという声を彼らから直接聞いている。外国では一般に子供の目に触れるところに成人誌は置いていない。彼らには日本に気持ち良くいらしてほしい」(同)。イオンは全店で成人雑誌のネット通販も控えている。
また従業員には女性や外国人も多数おり、そのうちに「成人誌の陳列・販売にストレスを感じていた」という者も少なくない。成人誌販売中止は従業員の定着にも寄与するものだという。
まだ間もない今回の措置で、他の小売業者の販売戦略への影響は見極めにくいが、このうちセブン―イレブン・ジャパンは「(店頭の)品揃えについては加盟店の意向によるが、2万33店のうち3000店で既に成人雑誌の販売を中止している。直営店でも同様だ。しかし本部から強要することはしない」「成人雑誌の売り上げが少ない店では取り扱わない」「雑誌の取り置きサービスを始めた」という。
またローソンは「加盟店のオーナーの判断に委ねている。基本的に仕入れの自由は確保してあり、オーナーは立地条件などにも配慮している。1万4000店舗のうち、2500店舗には成人雑誌は置いていない」。ファミリーマートは「オーナーの意向を重視、学校近くや病院内の店舗には基本的に置いていない」「人気の電子書籍を本として販売する」としている。
一方、有害図書の追放について自治体の動きも注目される。大阪府堺市は一昨年から、ファミリーマートの一部店舗で成人誌などにカバーを掛ける取り組みを始め、8割以上の市民の賛同を得た。その後、堺市と包括連携協定を結ぶ千葉市の市議・桜井ひでおさんらが2度、堺市を視察しその活動の様子を千葉市議会で紹介、千葉市は大きな関心を持った。
続いて昨年、熊谷俊人千葉市市長は、成人誌にカバーを掛け表紙を見えなくするモデル事業の実施を発表し、市内のセブン―イレブン約10店で展開するとした。しかし同社が拒否し難航、ミニストップは、カバーを掛ける方法は作業負担が増えるとしたが、それに代わり成人誌の販売中止で応えたという経緯がある。
熊谷市長は「本市からは、成人向け雑誌にフィルムを掛けることによるゾーニングの強化を提案したものですが、そうした雑誌の取り扱い自体を中止するミニストップ株式会社の取り組みは、結果として、本市が課題と考えていたことを根本から解決できるものであり、同社のご英断であると認識しております」とのコメントを寄せた。
有害図書の撲滅にはさらに多くの自治体を巻き込んだ国民的運動が必要だ。