中国の鳥インフルエンザに警戒が必要
東京都医学総合研究所・芝崎太氏
「どこまで知ってる? インフルエンザ」と題した都民講座が、このほど、東京都中央区の一橋講堂で開かれた。公益財団法人の東京都医学総合研究所 分子医療プロジェクトリーダー医師・医学博士 芝崎太氏がウイルスの変異の仕組みなどインフルエンザの基礎知識について講演した。
宿主内で遺伝子変異、無数の新型に
インフルエンザウイルスは直径1万分の1ミリ、大まかに言えば、球体状をしており、表面に数種類の多数の突起があり、八つの塊の遺伝子を内包している。自己増殖できないが、宿主の細胞に入り込み、HA(赤血球凝集素 ヘマグルチニンというタンパク質)とNA(ノイラミニダーゼというタンパク質)の遺伝子を再構成し、宿主の細胞分裂を利用して増殖する。HAは宿主の細胞・シアル酸への接続時に使い、NAは細胞から分離する時に使う。
抗原性の違いによってHA型が16種類、NA型が9種類ある。それぞれ少しずつ違ったタンパク質を持っている。感染が1種類だけだと、当然1種類しか増えないが、鳥インフルH1N1とヒトインフルH2N2が同時に感染する場合がある。そうすると、八つの遺伝子がシャッフルされ、2種類の8乗で256種類の新種の可能性。3種だと3の8乗で6561通りの組み合わせができる。体内で繁殖し得るものが残っていく。人間は新種に対する免疫を持っていないので、大流行になってしまう。
インフルエンザの語源は16世紀のイタリアで、「影響」を意味するInfluenza。冬になると流行し、春になると終息する季節性を持った、流行(はや)り病。日本では862年「三大実録」に1月自去冬来、京城及機内外、多患、咳逆、死者甚衆…と書かれている。また、1008年「源氏物語」、1010年「大鏡」、1329年「増鏡」などに、せき込んで、熱が出て、頭痛に襲われ、など示されている。江戸時代には「お七かぜ」「谷風邪」などで流行り病を表現している。
東南アジア・中国で流行っているH5、H7型は毒性が非常に強い。ニワトリに感染すると、あっという間に感染が広がり、死んでしまう。薬が間に合わないので数万単位で殺処分される。H5は鳥だけに感染が広がっていて、人から人への感染は見られていない。 飛沫(ひまつ)感染はマスクをすると、かなり軽減される。ドアノブ、電気のスイッチなどから手、口に移り、そこから感染することもある。くしゃみとか鼻水など、上気道炎を起こし、最悪の場合は上気道炎が肺に下がって、肺炎になってしまうケースもある。
ウイルスはあまり強くないので、細胞外では数時間しか生存できない。日中、紫外線に当たるとか、石鹸(せっけん)で手を洗うなどすれば、ウイルスはタンパクでできているので、壊れて殺菌される。早期に発見し、処置すれば、治りも早いので、必要以上に怖がる必要はない。