戸別補償制度を再主張

「民進」の農政特集/北日本では選挙効果も

 民進党の機関紙「民進プレス」は、政策特集中心の月刊紙という体裁になってから半年経(た)つ。党の動きは同党ホームページなどネットで、ということだ。党内対立が激しく、党内動向を編集する苦労をコストと共に省いたと思われるが、機関紙発行は自前の広報力を持つ組織政党としての体面を保ち得るものだ。

 新党の多くは機関紙発行に至らない。党首人気やブームによるマスコミの露出度を頼みとするので、議席は得ても党の浮沈が早い。

 また、機関紙発行は党勢のバロメーターでもある。民進党は月2回の発行を前述の通り3月から1回に減らした。党勢衰退は否めず、その後の展開はさらに厳しいもだった。

 東京都議選を控えて4月に都連幹部の長島昭久衆院議員が離党、その後も都議選候補者を含めて離党者が相次ぎ、7月都議選は敗退、選挙総括をめぐる党内議論で蓮舫執行部が厳しく追及を受け、野田佳彦幹事長が辞任表明、次いで蓮舫代表まで辞任を表明、代表代行を降りていた党実力者・細野豪志衆院議員は8月に入ると離党に踏み切った。来月早々また代表選がある。

 風雲急を告げる半年間だが、「民進プレス」は淡々と政策を語る。3月に「次の日本」、4月に医療・介護、5月に中小企業、6月に地域活性化、7月に農林漁業・畜産業、8月はエネルギーと環境だ。

 このうち、民進党の選挙に効果的に影響した政策は、同紙7月号(Vol.27)の農政をめぐる政策だろう。民主党政権時代の戸別所得補償制度を改めて強く打ち出したものだ。昨年の参院選では、民進・共産・社民・生活(現在は自由党)の4野党統一候補と自民・公明との対決が焦点になったが、北海道・東北地方など北日本の多くの選挙区で野党統一候補が勝ち、一矢報いた。

 農漁村が多い北日本では、農業が自由貿易の枠に組み込まれ始めた80年代のガット・ウルグアイラウンド(多角的貿易交渉)から、今日、米国の離脱表明で頓挫する結果にはなったが、環太平洋連携協定(TPP)交渉などに至るまで農政批判が続いている。

 食料自給率が低く担い手も減る日本の農業について、与野党とも問題意識を共有するが、対策手法は違う。「民進プレス」は、「農業の成長産業化を加速させる」安倍政権が進める農業政策は、「農業を他の産業と同一視し、急進的な成長産業化を目指すもので、一歩間違えば、国内農業を衰退させかねない」と批判。

 「恒常的にコスト割れをしている作物を対象とし、生産費と販売価格の差額を交付する制度」として、同党が議員立法として提案している「農業者戸別所得補償法案」を紹介した。民主党政権時代からの「バラマキ」批判には、「欧米などの先進国で広く行われている」と反論している。

 全国農協青年協議会の飯野芳彦会長は同紙で、「国費による支援ですから、国民の広い理解が必要です。そのためにはやはり、食料自給率の問題が、国民に理解されなくてはいけません」と述べている。今後も選挙争点とすべき政策テーマだ。

編集委員 窪田 伸雄