子どもたちの自尊感情をどう育むか
教師や教育関係者が集い「人格教育フォーラム」
日本の子供たちは他の先進諸国と比べて「自尊感情」が低いと言われている。心の重要な部分である自尊感情をいかに育むか。4月16日、日本いのちの教育学会会長・近藤卓氏を講師に第27回人格教育フォーラム(主催・一般社団法人 平和政策研究所「圓一」編集委員会)が東京都千代田区で開催された。
同フォーラムは月刊誌「EN-ICHI(圓一)」が企画。人格教育の実践を志す教師や教育関係者らの情報共有と研鑽(けんさん)の場として、第一線で活躍する教育専門家を招いて行われる。講師の日本ウェルネススポーツ大学教授・近藤卓氏は「いのちの教育」研究の第一人者として知られる。
「子どもたちの自尊感情をどう育むか」をテーマに、ジョークと歌を織り交ぜながらの講演会は和やかな雰囲気に包まれた。
恋と愛の違いに始まり、お母さんと赤ちゃんが見詰め合う「二人だけの恋」の関係から、やがて一緒に同じ方向を向いて「並ぶ愛の関係」に変わっていく。自尊感情を育む上で、一緒に笑ったり泣いたり、感情を共有する「並ぶ愛の関係」が重要と語った。その上で、子供一人でゲームやテレビに熱中するのは恋に溺れるのと同じと、昨今のスマホ依存に警鐘を鳴らした。
また最近の「褒めて育てる」教育は米国で既に見直されているとし、持論である「基本的自尊感情」の重要性を強調した。
氏によると自尊感情には「社会的自尊感情」と「基本的自尊感情」の二つがある。前者は「認められる、評価される、褒められる、社会的に成功する」といった、頑張って成功体験を積み重ねることによって獲得されるもの。後者は「この世に生まれてきた自分をありのまま認める」というもの。両者がバランス良く育っていないと、いじめや虐待といった問題行動が生まれやすいという。
講演では人間を4タイプに分け、最も危ないのは「頑張り屋で常に良い子、しかし不安を抱えている」タイプで、褒められて社会的自尊感情だけが肥大化し、それが挫折により凹(へこ)んだとき、危機的状況に陥りやすいと指摘。基本的自尊感情を育てるには、部活動や体育祭など共有体験の機会を増やすなど、教育の現場に活かせる実践事例も多かった。
参加者からは「子供と共に喜び、共に泣き、子供の心の中で10年、20年後も『先生に愛された』と思ってもらえるような教師になりたい」(20代、男性高校教諭)。「基本的自尊感情を高めるサポートをしてあげられるように努めたい」(児童民生委員)など、前向きな感想が寄せられた。
最後に中島みゆきの『誕生』の歌を引き語りで披露。「一緒に泣いたり笑ったりしながら、糊(のり)の染み込んだ和紙を積み重ねながら、しっかりと基本的自尊感情を育んでいくことだ」と結んだ。
(横田 翠)