総がかり運動説く「社会民主」 変貌し続ける伝統左翼

市民連合で野党共闘推進

 7月参院選で1議席減らして議席半減の社民党。落選した吉田忠智党首が9月9日の同党第8回全国代表者会議で続投した。その時のあいさつ(抜粋)を同党機関誌「月刊社会民主」10月号は巻頭に載せ、「国会の議席を失った人間が党首を続けることはまさに異例の事態」ながら、理解と協力を求めている。

 党は「異例の事態」とはいえ、戦後政治の老舗だけに左翼・労働界の実力者との縁は深い。同誌9月号は「総がかり運動の今後の展開」と題して、戦争させない・9条壊すな総がかり行動実行委員会(総がかり実行委員会)共同代表でフォーラム平和・人権・環境(フォーラム平和)共同代表の福山真劫氏による「総がかり運動の今後の展開」と題した、反安保法制運動から参院選、東京都知事選までの総括、展望を載せている。

 総がかり実行委員会の反安保法制デモ、記者会見などは共産党機関紙「しんぶん赤旗」や民進党が民主党だった昨年、機関紙「プレス民主」などで盛んに取り上げられてきた。が、それは宣伝報道であり、運動当事者によるものではない。

 福山氏が共同代表を務めるもう一つの団体「フォーラム平和」は、1954年に日本労働組合総評議会(総評)、右派社会党、左派社会党などが参加して結成した憲法擁護国民連合(護憲連合)が前身である。55年に「護憲」を共通項に社会党の左派と右派が統一すると護憲連合は社会党の強力な運動基盤となり、憲法改正を立党精神にして保守合同した自民党と対決してきた。

 護憲連合が「平和フォーラム・人権・環境」に改称したのは92年に原水爆禁止日本国民会議(原水禁)などと共同したからだ。自治労、日教組、私鉄総連など労働団体や部落解放同盟、社会主義青年同盟など人権・政治団体といった主に旧社会党傘下団体が参加している。

 同誌記事で福山氏は、2015年に反戦・護憲の「3団体が運動統一を実現し、総がかり実行委員会を発足させ……国政レベルで共産党を含む野党共闘が実現するのは初めて」で、「参議院選挙などの選挙闘争では、この間、民進党を中心に後退戦を強いられてきた状況の中で、民進党・共産党・社民党などの野党共闘で反撃への希望がつくられつつあ」ると強調した。

 また、「運動上、多くの克服すべき課題」として、特に「野党共闘の政策・体制・連携のあり方などの不十分性を克服する必要」を説いている。政治運動の分野では「総がかり実行委員会は市民連合に結集し、野党共闘の推進を目ざ」して、「衆議院選挙に向けて、さらに強化をし、連帯の内実をつく」るという。

 総がかり実行委員会も市民連合も最近聞く団体名だが、実際は戦後の伝統的な左翼運動の活動家たちが時の情勢や目的に応じて闘争目標を掲げ、幾つもの団体や運動を創出して名乗っているにすぎない。変貌し続けながら政権奪取の機会をうかがっているのだ。

 限界が見える社民党は市民連合が仕掛ける野党共闘にすがりついている。

解説室長 窪田 伸雄