北朝鮮の核容認する中国

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 北朝鮮の第4回核実験と長距離弾道ミサイル発射に対する中国の姿勢に疑念が高まっている。特に、北朝鮮の弾道ミサイルから在韓米軍と韓国を防御する高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)配備に対する中国の猛反発はなおさらだ。

 中国は多くの国々に囲まれており、周辺諸国を弱体化させる対外戦略を推進してきた。例えば、パキスタンの核武装を容認して国境紛争を抱えるインドをけん制している。また、パキスタンを通して北朝鮮に核技術を移転させた。北朝鮮を核武装させて韓国、日本、米国をけん制するためだ。即ち、中国は北朝鮮の核武装を「暗黙の了解」で容認したわけである。

 北朝鮮と中国は1961年、中朝友好協力相互援助条約を締結したが、第2条に「自動参戦」条項を記している。また朝鮮戦争で戦死した毛沢東の息子の墓が北朝鮮にあり訪朝中国高官は必ず墓参りを欠かさない。中・朝は文字通り血盟関係であることが分かる。

 北朝鮮の長距離弾道ミサイルの発射車両は中国産である。北朝鮮の弾道ミサイルは日本とアメリカを狙っている。これこそ、中国の代わりに北朝鮮をして日米をけん制させる象徴である。韓国攻撃にはスカッド級(射程300~500キロメートル)ミサイルで充分だが、北朝鮮は日本攻撃用のノドンミサイル(射程1300キロメートル)と沖縄とグアムの米軍を狙うムスダン及びデポドンミサイル(射程3000~6700キロメートル)を実戦配備している。今年、2月7日には射程12000キロメートルの長距離弾道ミサイルを発射して、米本土まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)保有を印象付けた。

 北朝鮮はまた、2005年に核兵器保有を宣言し06年、09年、13年、そして今年1月に相次いで核実験を行った。中国は常に「北朝鮮の核実験と弾道ミサイル発射を反対する」と表明し、国連安保理の対北制裁決議に賛成はするが実際の制裁は穴だらけ。そして北朝鮮に時間稼ぎと免罪の機会を与えてきた。

 韓国は中国の国家戦略を見逃し中国の役割に大きく期待し過ぎた。現実を厳密に見れば北朝鮮の核武装によって南北の軍事力均衡は崩壊し、米国の核の傘がなければ北朝鮮に飲み込まれる危険性を抱えている。

 韓国の朴槿恵大統領は昨年、無理を押して中国の戦勝記念式典に出席したが、その中国は「万が一韓国がサードを配備する場合、代価を支払うだろう」と威嚇している。

 やはり韓国が生き残る安保戦略は米韓同盟に基づいた日米韓の安保協力体制の強化しかないのだ。

(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授)