墨田区立第一寺島小で「スマホミーティング」

高校生が使い方アドバイス

 インターネット関係のトラブルが小中高生の間で増えていることから、東京都教育委員会は今月2日、高校生が小学生にスマートフォンなどの適切な使い方について教える「スマホミーティング」を行った。高校生が教え、小学生が教わるという斬新な授業は、お互いに情報モラルについて考えを深める機会とする初の試みだ。(佐藤元国)

情報モラルの考え深める機会に

墨田区立第一寺島小で「スマホミーティング」

スマホミーティングで、小学生を相手に授業を行う高校生=今月2日、東京都墨田区の区立第一寺島小学校

 授業を行ったのは「平成27年度ICT活用推進校」として、タブレットPCなどの情報機器を活用した授業実践などに取り組む都立墨田川高等学校の生徒32人。墨田区立第一寺島小学校で2校時(1校時45分)実施した。

 高校生は5~6人に分かれて教師役となり、同小学校の5、6年生(5クラス150人)を相手に、自分たちで考えて用意したプレゼンテーションやクイズなどを使って授業を行った。

 東京都教育委員会の担当者は、スマホミーティングについて、「狙いは二つある。一つは高校生自身がスマートフォンやSNSなどとの関わりについて、小学生に何をどうやって伝えるか考えることで、自分自身を振り返り情報モラル意識を高める。もう一つは小学生が身近な高校生の実体験を踏まえた意見を聞くことで、専門家とは別の視点から情報モラルの重要性を学ぶ」と語る。

 5年1組の児童に授業を行った小野口友治さん(高校2年)がプレゼンテーションやクイズを作るにあたって「一番意識したのが(無料通話アプリLINEの)『既読無視』の問題。これからの世代はLINEなどを当たり前に活用する。小学5年生の場合、もう少し学年が上がると使い始める。その時、必ず直面する問題なので、教えてあげなければいけないと思った」と語るように、授業は高校生の実体験を踏まえて行われた。既読無視は相手が既にメッセージを読んでいるのに、返事が来ない状態をいう。

 授業はクイズ形式で行い、正しい使い方を2択から選択させながらLINEの既読無視によるトラブルの事例などを紹介した。既読無視などを発端にしたトラブルで、グループから外されたり無視されたりした人が不登校になったり、もっと悲惨な結果を招いてしまったこともあると説明。その上で、「現状、私を含めて、既読無視には敏感になっている。けれど何か事情があるのかもしれないと、相手の事情を考えて冷静になることが必要だ」とアドバイスした。

 このほか、クイズの回答について話し合ったり、SNSの使い方などについて高校生が小学生の質問に答えるグループディスカッションなども行われた。知らない人から来たメールに応じた女子中学生が犯罪に巻き込まれた事例などを挙げながら、同じ中学生だと名乗る知らない人から「会いたい」とメールが来た時、どうするかなどを話し合った。

 授業を受けた児童は「相手が本当に中学生か分からないし、会わない」「両親に相談した上で、交番の前など安全な場所で会ってみる」などの意見を出していた。

 小野口さんは、授業の感想を次のように語った。

 「この年代にしてはスマートフォンの危険性についてよく知っていて驚いた。また親御さんのスマートフォンを利用してる子供がとても多かったことが印象的だった」

 東京都教育委員会が今年、都内の公立小中高生などを対象にしたアンケート調査(平成26年度インターネット・携帯電話利用に関する実態調査報告書)では、自分のスマートフォンを使っている小学生は5年生で16・3%、6年生で24・8%、中学生で約50%だった。高校生では80%を超えた。

 また、親や兄弟のスマートフォンを使っていると回答した小学生は5年生で55・7%、6年生で48・4%。個人所有を含めると、高学年の7割強がスマートフォンを利用していることが分かった。

 一方で、小学生で46・2%、中高校生なども含めた全体では約60%がインターネットの利用ルールを定めていないことが分かった。この調査では、メッセージアプリや無料通話アプリ利用の結果、子供たちが「悪口・デマ」「グループ外し」などに直面している実態も明らかになり、情報モラル教育の重要性が明確になった。

 第一寺島小学校の保谷力校長は「年に一度、携帯会社の人を学校に招きモラル講習を行っているので、子供たちはスマホの使い方を間違えたら大変だということを知っている。しかし、子供たちの心の中にもう一歩入っていけず、それを自分のことだと受け止められていなかった」と語る。

 その上で、「高校生という自分の見本のような、一番真似したい世代の人が『危ないよ』と言っているのだから切実に受け止めてくれているのではないか」と述べ、高校生が授業を行うことの意義を強調した。