「北海道博物館」、札幌市に新たにオープン

自然・歴史・文化研究の中核拠点に

 これまで北海道の開拓史を中心に調査研究を進めてきた北海道開拓記念館とアイヌ文化調査・普及活動を行ってきた道立アイヌ民族文化研究センターが統合され、「北海道博物館」(札幌市厚別区)として新たにスタートした。120万年前の北海道の様子から縄文、アイヌ文化さらに現代までを総合的に捉えて企画を構築し、道民参加型のミュージアムを目指す。札幌、江別、北広島市の3市にまたがる約2000㌶の広大な野幌森林公園を背景にもつ同博物館は北海道の新しい名所となりそうだ。(札幌支局・湯朝 肇)

道民参加型を目指す、愛称は「森のちゃれんが」

「北海道博物館」、札幌市に新たにオープン

「北海道博物館」に展示されているナウマンゾウ

 「北海道開拓記念館と道立アイヌ民族文化研究センターの二つの施設が統合され、それぞれ築き上げてきた伝統や業績を受け継いでいくことで名実ともに北海道の中核となる総合博物館がスタートします」

 4月18日、「北海道博物館」のオープン記念式典で石森秀三館長はこうあいさつした。

 北海道には全道の歴史や文化を集約する「総合博物館」は存在しなかった。もちろん、各市町村には市の歴史や文化を紹介した博物館や郷土資料館があり、教育機関にも博物館はあった。

 例えば、北海道大学には「北海道大学総合博物館」がある。しかし、それは札幌農学校以来、同大学が研究、調査、蓄積した標本や資料などの展示を中心にしたもので学術性が高い。一般公開しているが、道民向けの博物館とは言い難い。

 一方、北海道の歴史や文化、とりわけ縄文や続縄文時代など有史以前の北海道特有の文化や和人(日本人)が移住して以降の生活文化、歴史などについては、これまで北海道開拓記念館が資料収集・保存、研究調査を行ってきた。ちなみに、同記念館の開館は1971年で、40年以上も前だ。

「北海道博物館」、札幌市に新たにオープン

「北海道博物館」のオープン式典でのテープカット=4月18日、札幌市厚別区

 北海道文化の一翼を担うアイヌ民族文化については、道内各地に古式舞踊や伝統芸能を継承する博物館や資料館などが存在し、その多くが観光名所として一般公開されている。道立アイヌ民族文化研究センターはそうした各地に伝わる無形文化としての「言語」「生活技術」「歴史」について現地調査を進めるとともに、文献や映像資料として保存し、研究を重ねてきた。

 今回、二つの施設を統合した背景について、記念式典に参加した髙橋はるみ知事は、「日本の最北に位置する北海道では近年、数多くの国際会議が開かれ、外国人観光客も増加し、国際的に知られた地域になっている。そうした中で、北海道の文化力を高めるのは必須事項。とりわけ、2018年は北海道開基150年を迎える。新しい北海道をアピールする上でも、また道民の豊かな暮らしづくりと未来づくりにも北海道博物館は大きな力となる」と力説した。

 すでに開館から1カ月以上が経(た)つが、人気は上々。入場者数は開館8日目で1万人を超えた。週末には多くの親子連れでにぎわう。

 今後の方向性について、堀繁久・事業部主任学芸員は「北海道120万年前の時代からアイヌ文化の世界、北海道らしさの秘密、北海道の自然、そして私たちの時代というように五つのテーマに分け、北東アジアの北海道、人と自然のつながりを打ち出していきたい。単なる展示ではなく、道民が理解し、楽しく参加することのできる空間にしていきたい」と語る。

 北海道博物館の愛称は「森のちゃれんが」。れんが造りの記念館と野幌の森の緑をイメージしたという。それぞれのテーマ会場からは、「北海道の文化を世界に発信したい」という意気込みが感じられる。