勉強嫌いを勉強好きに 「勉強の技術」で学習困難克服
「発達障害」専門の塾講師・福嶋和幸さん
「発達障害」とされる子供が増える中、学習に困難を抱える子供の指導に情熱を燃やす塾講師がいる。個別指導塾「スタディフォライフ」(東京都練馬区)代表の福嶋和幸さん(27)だ。高校時代には、自らも学習に困難を抱えていた。それを克服した経験を生かし、コミュニケーションを大切にした丁寧な指導に「作文が書けるようになった」「連立方程式が解けるようになった」など、喜びの声が寄せられている。(森田清策)
自らの高校時代の体験生かす
「(発達障害と診断されて)『脳の障害だから』と諦めている人もいますが、そういうスタンスではなく、この問題は解決できるというところから入っていきます」。こう語る福嶋さんが、「発達障害」専門の塾「スタディフォライフ」を開設したのは昨年春。
慶應義塾大学環境情報学部を卒業した福嶋さんは、プロの家庭教師や私立高校の成績上位者を集めた特別進学クラスの非常勤講師を務めた経歴を持つ。しかし、高校時代は赤点続きで、「今だったら、発達障害の分類に入るのではないか」というほど、学習に困難を抱えていた。
それが姉から米国発祥の「勉強の技術」を紹介されたことで劇的に変わった。4カ月ほどの受験勉強で慶應義塾大学のほか、上智大学、中央大学法学部など受験した大学をすべて合格した。大学入学後は大手芸能事務所に所属し活動したこともある。
「勉強の技術」は、読んで学ぶことに障害を持っていたため「失語症」と診断された俳優のトム・クルーズ氏が頼ったことで知られる学習の向上方法。米国の教育者のL・ロン ハバード氏が開発したもので、トム・クルーズ氏はこの技術で、学習の障害を克服し、映画会社を経営、またパイロットの免許を取得している。
その特徴は①誤解語(意味を知らなかったり、間違って理解している単語)の放置②マス(勉強の対象となっているものの実体)の欠如③段階の飛び越し(ステップを踏むべきところでそれをしない)の三つが学習の障害になっているとし、それらを除去することが学習能力アップにつながるとするところにある。
オーストラリアなどへの留学を通じて、この技術をさらに向上させた福嶋さんがプロの家庭教師や講師として受験指導する中で多かった相談が「発達障害」と診断された本人やその保護者からのものだった。学習の障害を、発達障害とみないで解決可能な「勉強の壁」としてとらえるのも「勉強の技術」の特徴の一つだ。
文部科学省の調査によると、読み書きが難しいなど学習に障害を抱え「通級」による特別指導を受けている児童生徒は全国に8万3000人(平成26年度)いる。その多くは、発達障害と言われ、増える傾向にある。発達障害には、学習障害(LD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉症などがあるが、その基準が不明確なことから、過剰診断や過剰投薬といった問題も指摘されている。
「たとえば、ADHDは誤解語の現象で、それが心理や身体に影響を及ぼしていると考えられます。実際、誤解語が解決すれば、チックのような動きが解決することが多いのです」と語る福嶋さん。困っている子供たちへの対応のために開設した塾だが、まったく宣伝を行わないにもかかわらず、口伝えに評判が広がり、小学生から高校生まで10人以上を指導するようになっている。今年春には高校受験に成功した生徒もいる。
「勉強の技術」とともに、福嶋さんが指導の柱とするのが子供とのコミュニケーション。「私は、詰め込みの勉強をしません。否定や評価もしません。これはコミュニケーションの観点からで、そこをしっかり対応できれば、子供は素直ですから勉強を好きになり、楽しくなります」
指導を受けた子供や保護者からは次のような感想文が寄せられている。
「まえはできなかったさくぶんがたくさんかけるようになった。できるようになってうれしかった。おかあさんがよろこんでうれしかった」(小4男子)
「テストですうがくは0点~9点だったけど、いまでは29点もとれるようになってうれしいのでこれからも、もっとがんばっていいてんをとりたいです」(中2男子)
「数字を見ただけで嫌がっていたのに、今では連立方程式を解けるようになり、数学の先生に『数学ができるようになったんだ』と話していたそうです」(中2男子の母親)
「Aがこんなに勉強をやりたいと思っている。知らない事、分からない事を知りたがっている事にびっくりしました」(小2男子の母親)
現在、塾講師は福嶋さん一人だが、学習に障害を抱えている多くの子供に対応するため、「技術を習得した講師を増やしたい」と意欲を燃やしている。
スタディフォライフの問い合わせ先(電話03-6312-7332、Eメールinfo@studyforlife.net)。