外国人観光客1000万人時代の影 劇場内の案内放送は韓国語だけ


韓国紙セゲイルボ

 6165万2158人。韓国法務部が発表した昨年の出入国者数だ。韓国全体の人口より多い。歴代最大値だという。この中で観光や訪問目的で韓国を訪れた外国人は1048万6992人。今や外国人観光客1000万人時代を迎えている。

 数日前、ミュージカルを観(み)にソウル江南区の劇場を訪ねた。平日昼の公演だったが大盛況で、13万ウォン(約1万4000円)もするVIP席も埋まっていた。

 公演前、手洗いには順番を待つ列が続いていた。後方からは日本語が時々聞こえた。観光客らしい日本人中年女性たちだった。「韓流スター」を見に来た団体客だろう。

 この日、印象深かったことは公演それ自体ではなく、案内放送だった。「携帯電話の電源はお切りください」のような決まり文句ではなかった。「公演が始まれば写真撮影は禁止です。美男美女に撮れる角度で“自撮り”をたくさん撮っておいてください。写真たくさん撮れましたか?」というものだった。場内には笑いが起こり、誰彼なく写真を撮るスマートフォンのシャッター音が続いた。

 だがすぐに気が付いた。「自分たちだけが分かっただけ?」ということだ。案内放送は韓国語でだけ行われたからだ。

 さっきの日本人は疎外感を感じなかっただろうかと思い、申し訳ない気持ちまで湧いてきた。彼女たちの他に公演を観に来た外国人はもっといたかもしれない。

 外国人観光客1000万人時代は新しいことではない。既に3年前に突破していた。ソウル明洞や済州島のような観光名所に行けば、「ここが大韓民国か」と疑うほど外国人が多い。

 今やカギはどんな観光商品を開発するかになっている。外国人のリピーターを増やす誘因を作り出さなければならない。質の良い商品と観光名所だけでは足りない。彼らが韓流で代表される韓国文化に接する機会を多く作ることが重要だ。韓流ブームを引っ張るアイドルスターと芸能人が各種公演の主演や助演としてキャスティングされるのも、彼らを見に来る外国人が多いからではないのか。

 外国人観光客の間では、「韓国ではショッピング以外、見るべきものがない」という不満の声があるという。彼らの足を劇場に向かせようとするなら、外国語案内放送の義務化のような最小限の配慮が必要ではないだろうか。

 現政権の構想の通り2017年外国人観光客2000万人時代を開き、韓流産業を景気活性化の動力とするには、道はまだ遠い。

(パク・チニョン国際部記者、2月5日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。