金正恩氏が気にする「叔父の動向」


 北朝鮮の故金正日総書記の誕生日に当たる2月16日、駐オーストリアの北朝鮮大使館を訪ねたが、夕方から大使館前の写真掲示板は閉鎖され、周辺は静まり返っていた。ただし、大使館の中庭には外交官公用車ベンツが7台駐車していたから、ひょっとしたら、大使館内でささやかな祝賀会が開かれていたのかもしれない。

 当方は、駐ポーランドの北大使を17年間務めた金平日氏が昨年12月、駐チェコ大使に人事異動されたことを聞いて以来、金平日氏が駐オーストリアの金光燮大使に会うためウィーンを訪ねてくるのではないか、と密かに期待している。

 金平日氏は故金日成主席の2番目の妻、金聖愛夫人との間の長男で、金主席と正妻の間の長男、故金正日総書記の最大の政敵だったが、政争に敗北後は欧州の地を転々としてきた。具体的には、82年に駐旧ユーゴ武官を皮切りに、88年に駐ハンガリー大使、同年から94年まで駐ブルガリア大使、84年から98年までフィンランド大使を歴任した後、1998年から昨年12月まで約17年間、駐ポーランド大使を務めてきた。

 金平日氏は駐ポーランド大使時代に数回、金光燮大使と会ったという情報があるが、同氏が駐チェコ大使となったことで、隣国オーストリアの金光燮大使と物理的にも更に近くなった。プラハとウィーン間は電車で約4時間だ。

 一方、金光燮大使は今年3月で駐オーストリア大使として駐在期間が22年間となる。おそらく北朝鮮大使としては最長駐在記録の保持者だろう。その金大使夫人は金平日氏の実妹、金敬珍夫人だ。
 
 金平日氏の家族とウィーンの金大使との親戚交流が始まれば、平壌はどのように対応するか、非常に興味深い。ちなみに、金光燮大使は駐オーストリア大使を務める前、駐チェコ大使を5年間余り務めているから、金平日氏にチェコ大使時代の体験や思い出を語れるだろう。

 当方は金平日氏がブルガリア大使時代、ソフィアのブルガリア労組機関紙記者を通じて金平日氏との会見を試みたことがある。その時、「金平日氏の言動が平壌から派遣された治安担当の北外交官から厳しく監視されている」といった印象を受けたものだ。

 韓国の聯合ニュースによると、チェコのソボトカ首相が今月24日から4日間、朴槿恵大統領の招きで韓国を公式訪問する。同首相の公式訪問はチェコ・韓国国交樹立25周年記念祝賀の一環だが、「ソボトカ首相の訪韓には主要閣僚と60人余りの経済使節団が同行する」という。朴大統領とソボトカ首相首脳会談の際、駐チェコ大使に就任した北朝鮮の金平日氏の動向が話題になるかもしれない。北朝鮮の最高指導者・金正恩第1書記の叔父に当たる金平日氏と金光燮大使の2人の北大使の動向がこれまで以上に注目されることは間違いないだろう。

(ウィーン在住)