民主主義・自由の苦闘、積極的貢献求められる日本

山田寛 この夏は、国際政治にも暑い夏だった。

 イラク、シリア、ガザ地区、リビア、ウクライナ…の戦禍。イスラム超過激組織が台頭、「アラブの春」は息絶えた。ナイジェリアの女子生徒拉致のテロ集団は、10歳も含む女性による連続自爆テロを敢行した。タイの民主主義は仮死状態。ミャンマーの民主化も、報道抑圧など足踏みが目立つ。

 そして、ロシア、中国の力による現状変更の動き。中国国内の弾圧や香港の1国2制度への暗雲。世界で民主主義・自由が苦闘している。

 その苦闘は、信頼できる国際調査にも表れている。米NGO「フリーダムハウス」は40年来、世界各国(非独立地域も含む)の自由度を調査、「政治的権利」「市民の自由」を細かく採点し、ベストの1から0・5刻みで7まで評点をつけ、「自由の国」、「部分的自由の国」、「自由でない国」に分類している。その14年版報告によれば、過去8年連続で、自由度が前年から上がった国より下がった国の方が多かった。「自由」の比率も13年は45%。10年前の46%から頭打ちだ。

 そんな中で、日本の評点は1・5から1に上がった。23年ぶりの1である。アジアでは、「自由」は、ほかに台湾、モンゴル(各1・5)、韓国(2)、インド(2・5)。

 同じNGOの「新聞自由度」調査14年版でも、世界の新聞自由度は過去10年間で最低となった。日本は42位(自由)。アジアでは台湾47位(同)、韓国68位(部分的自由)の順だ。

 アジア1位の日本はもっと世界の民主主義・人権・自由の拡大に貢献すべきではないか。90年代、米国にいた時、米政治家や言論人からもそう言われた。

 ある時、集会でそう話したら元駐中国大使から猛反論された。「あんな戦争をして負けて民主主義を与えられた国に、そんな資格はない」。

 現在の集団的自衛権行使容認問題でも、朝日新聞など反対派は、他国全部が行使できても過去ある日本は資格がない、戦争をする国になると言う。重い自国自民族不信症だ。

 20年余り前、国連PKO(カンボジア)初参加の時も、反対派はそうだった。国連管理選挙の監視員まで行かせまいとした。「とにかく危険だ」「PKO法に基づく監視員派遣は将来侵略につながる」。反対メディア記者の説得工作で、当初決定の65人が41人に減ったと、関係者が憤慨していた。

 民主主義・人権外交の展開、国際影響力の拡大というと、彼らの反応は今も消極的だ。日本の頭の上に残るハエを追うのが先と言う。だが、頭上に1匹いても、他人の多数のハエを追うべきだろう。

 まず、広報文化外交予算を大幅復活する必要がある。14年度予算では199億円。10年前の約3分の2だ。韓国は、予算総額は日本の10分の1だが広報文化関係は4分の1。5年前より5倍増させた。10年→13年に日本の海外広報センターは32から27に減り、韓国は30から37に増やした。

 中国も「公共外交」(パブリック・ディプロマシー)を特別重視し、日本の何百倍もの国費を投入しているようだ。

 センターも国際放送も何でも充実させ、日本の信奉する価値観を広げる努力を強化しよう。「慰安婦強制連行証言はウソでした」事実なども広く伝えよう。

 民間でも、例えば日本の新聞界は部数世界一を誇っても、途上国の新聞への支援などどの程度しただろうか。「資格がない」の一国平和主義、一国民主主義は、世界の現況の中で無責任の同義語になってしまう。

元嘉悦大学教授)