花の絵を5階建てビルの窓に貼り絵

秋田県の高校美術教師らのボランティア団体「ずっく」

 秋田県の高校の美術部教師らで作るボランティア団体「doekずっく」(工藤敬子代表、会員10人)はこのほど、3日間のワークショップ「FLOWER WINDOW」を秋田市のアトリオンで開いた。会員や中高生、一般参加者など延べ約50人が大きな花の絵約40枚を描いた。それらの作品は、3日から6日までの竿燈(かんとう)期間中に歩行者天国の路上でさらに描き加えられ、最終的に5階建の「くらたビル」のすべての窓に張り出される。一部はすでに張られており、県外から来た観光客の目も魅了している。(伊藤 志郎)

ワークショップで花をテーマに

秋田市 5階建てビルの窓に貼り絵

秋田市のアトリオン地下イベント広場で花などを描く参加者。遠くからでも見えるように大胆かつ繊細な作業を進める

 「ずっく」は、2003年に秋田県生涯学習ボランティア「マナビィ・スタッフArt」として登録し活動をスタート。今回と同様の公開ワークショップや会員による作品展を開いてきた。

 7月19日から3日間にわたってアトリオン地下イベント広場で開かれたワークショップでは、高さ3㍍、幅1・8㍍のオレンジ色が鮮やかなビニールシート約40枚に、カッティングシートを思い思いに切って張り、桜、ヒマワリ、アジサイなどの花やネコ、トリカゴなどを描いた。それらは、竿燈期間中にも一般の人々によって手が加えられ、くらたビルの窓に張り出される。

 JR秋田駅から、竿燈が開かれる竿燈大通りに徒歩で行く人にとって、このくらたビルはほぼ中間地点に位置する。

 ビルは、仲小路商店街にある。秋田県立美術館と秋田市千秋美術館(アトリオン1階)を結ぶ通りは「仲小路ミュージアムストリート」と呼ばれている。一年を通してさまざまなイベントが開かれるが、竿燈期間中は歩行者天国となり、商店ごとのディスプレイや食事・休息場所の提供、ワゴンセール、産直物産やかき氷の販売、音楽演奏などでにぎわいをもたらしてきた。そこに「ずっく」が協賛してワークショップを開催した。

 ワークショップ最終日となった7月21日、記者(伊藤)はアトリオン地下イベント広場を訪れた。オレンジ色の大きなシートが幾つも並べられていた。「ずっく」事務局の岸上恭史(たかし)さんによると、くらたビルを借りて、1階から5階までのすべての窓に花をモチーフとした絵を展示するという。

 高さ3㍍ほどもある窓が約40あり、それを覆う大きさの花の絵を描き、内側からすべての窓に絵を展示する。絵は、絵の具を使わず、白、青、緑などのカッティングシートを切って貼る作業のため、中高生や一般参加者も手や服などを汚すことなく、気軽に参加できる。

 仲小路を会場に、「ずっく」は2012年には水族館、また13年には「DOGU」(土偶)をテーマにワークショップを開催。13年は、高さ160㌢の立体土偶や、町を飾るたくさんの土偶プレート、土偶のお面コーナーなどを設け、「アートで、おもてなし」の気持ちを大切にして活動を続けている。

 イベント広場で制作している人に聞いた。

 「ずっく」会員の女性教師は美術部員とともに参加。「絵の具では不可能なことができるかなと思う。カッティングシートの色がはっきりしているので、きれいに見えるかもしれません。子供にとっては、いろんな年代の人に触れることで刺激になればと思いますし、コミュニケーション能力を高め社会性を育てるためにも有意義だと思います。くらたビルでは、道行く人にきれいだなと言われれば生徒の励みにもなるでしょう」という。

 秋田公立美術大学附属高等学院に通う娘さんと一緒に参加した母親は、「最初はシロツメクサを描こうと思い、花びら一枚一枚はどうなっているのかネットで調べたのを見ながら作っていましたが、会の方から『自由な発想でやっていいですよ』と言われ、自分の感覚でやってみたらおもしろくなりました」と、作業に熱中していた。

 その娘さんは現在、金工を専攻し、指輪や金属の板などを加工する卒業制作に取り掛かっている。「3日間参加しました。由利高校(由利本荘市)の女子2人と一緒にシロツメクサやスズランを作りました。2人とは初対面でしたが仲良くなって、進学や県展への出展などで話が盛り上がりました。いつもは50号(約90㌢×1・2㍍)くらいの作品が多いので、こんなに大きいのは構図をどうしようかと思いましたが、のびのびと出来て良かったと思います。他の作品を見ると、桜のグラデーションの花びらの重ね方など、発想が自由で感心しました」と語っていた。