ジオパークでモノ・人を再発見


鳥海山・飛島ジオパークガイドの会にかほエリアリーダー
工藤 純氏に聞く

 全国には日本ジオパークが44地域あり、そのうち秋田県は4地域を抱える。その一つ、鳥海山・飛島(とびしま)ジオパークは2016年に日本ジオパーク委員会(JGC)から初めて認定された。4年ごとに審査があり、21年2月に再認定された。ジオパークの中心で活動しているのはガイド。

 鳥海山・飛島ジオパークの四つのエリアの中で、にかほエリアのリーダーを務める工藤純さんにガイドの取り組みについて聞いた。
(聞き手=伊藤志郎)

人・地域を育て産業発展も
埋もれた魅力がいっぱい
専門ガイドが出前授業

鳥海山・飛島ジオパークガイドの会にかほエリアリーダー 工藤 純氏

くどう・じゅん 1954年、にかほ市生まれ。TDKに約40年、酒田市の会社に2年半勤務。趣味の渓流釣りと写真の知識を生かし退職後、にかほ市観光案内人協会で活躍。鳥海山・飛島ジオパークでは準備段階から携わり、昨年から四つの地域の一つである「にかほエリア」のリーダーを務める。写真家でもある。

ジオパークに関わったきっかけは?

 鳥海山・飛島ジオパークはエリアが四つ。秋田県の由利本荘市、にかほ市、山形県の遊佐町、酒田市(飛島を含む)です。私は、にかほエリアのエリアリーダーを去年から務めています。

 にかほ市生まれで、秋田市の秋田工業高校に2時間かけ蒸気機関車のデゴイチで通いました。カセットテープとかコンデンサーなどを作るTDKに約40年勤めました。その後、酒田市の会社に2年半ほどいて退職しましたが、退職する前からジオパークの立ち上げ準備に2年間関わっています。

名刺には、第51回二科展本展入選、海岸愛護フォトコンテストで建設大臣賞、第13回十和田湖の四季で環境大臣賞ほか各種コンテストで入賞・入選が多数ですね。

 私は趣味で写真をやっているフォトグラファーです。

 親父が船を持っていたので、小さい頃から川釣りや海釣りに行きました。ある時、フライフィッシングをテレビで見て病みつきに。この近くでは白雪川とか奈曽川で渓流釣りをし、友達に渓流の景色や魚を見せたいと写真を撮っていたがうまく撮れない。一眼レフのカメラを買って、さまざまなフォトコンテストに出品しています。

 にかほ市には観光案内人協会があり、TDKの先輩から声を掛けられ退職後に入りました。ジオパークを立ち上げる話があって、協会のガイドの人たちはみんな山や川が好きだから一緒にやろうと、2年間みっちり研修を受けたのです。

 準備段階ではガイドの研修と組織づくりで大変でした。ガイド費用はどうするか、ユニフォーム、接客、天気予報の見方、雨が降るときの道具の準備等々。バスガイドの大先輩から接客の仕方も教わりました。

 審査の際、私は一カ所、メインのガイドとして鳥海山の山体崩壊を担当。日本海沿岸自動車道仁賀保(にかほ)インターチェンジの場所で今から約2万5千年前の埋もれ木が出てきたこと、山体崩壊で縄文時代の遺跡が埋もれたと解説しました。

こちらのジオパークは21年2月に再認定を受けた。地域住民へのイベントやジオツーリズムのガイド、教育活動への継続した取り組みが評価されたわけですね。

 1月に実施したジオパーク文化祭もその一つですし、年間を通して認定ガイドがこの地域を素晴らしさを伝えるジオガイドを実施してきました。あとは学校の出前授業もよくしています。教育委員会と相談し、地域の動植物や歴史を話します。子供たちや地域の人たちとの交流がジオパークの一番大切なことです。自分たちの地域に興味のある人間を育てること、そして産業を起こしていく。

それがジオパークの理念の一つになっている。

 若い人たちに刺激を与えて、都会に行った人が帰って来るとか、観光客にいっぱい来てもらって交流の輪を広げ、移住する人が出てくるのが目的です。ガイドしてお金を儲(もう)けるという考えは誰も持っていません。

ガイドの皆さんは生き生きしています。専門分野を持っているようですが?

 ガイドは全般的に知っていなければいけないが、自分の好きなものを見つけていくのがここの考え方です。ガイドをする1時間か2時間の中で、いくらでも自分をアピールしてくださいと。そうすれば必ずつながりが出てきますから。石好き、写真好き、トンボ好きで広げていけばいいと思っています。みんな一緒にはならないし、好きなもの、育った環境も違う。

 水専門の人がいます。水質や温度のデータをすごく持っている。真冬でも湧き水まで登って行って成分が変わってないか自費で分析するほどです。

今後の課題・目標は何ですか?

 国内には九つのユネスコ世界ジオパークがあり、こちらの取り組みが評価され参入を勧められています。世界ジオパークは夢ですが、最終目標ではありません。ジオパークによって起業できる人が大勢出てくることが一つの目標です。

 一つの例として地元の漁師の間では見た目は悪いが美味(おい)しい魚があって、それが知られるようになったら高級魚として東京で食べられるようになった。うちのジオパークのホームページには認定商品が約55種類紹介されています。地元の人って気づかないんです。第三者、例えば東京から帰って来た人が食べてみたら美味しいとか。おにぎりにしたら、ここのお米が美味しいよとか。

 夢の一つは世界ジオパークになり、世界の人と交流すること。そのためには語学が必要です。簡単な言葉でいいので説明を付け加えれば、写真と笑顔を見て伝わるのではないかと思っています。

 ジオパークでは、地域の地形や気象を知り、これを地域の人々に伝えることにも努めています。地域の人と一緒に勉強して、防災や減災に少しでも役立つことも使命にしていきたいです。


【メモ】ジオパークは秋田県内に4地域あり、紹介イベントが随時開かれる。1月中旬、にかほ市で開かれたジオパーク文化祭もその一つ。展示の前に立つたびガイドの人が熱心に説明してくれる。ガイドはどんな気持ちで活動しているのかインタビューしたら、<産業を起こす><移住>という視点には驚いた。確かに、ジオパークはモノだけでなく内外の人材発掘という側面もあるのだと合点した。