歴史創った選手・スタッフを讃える


特別編集委員  藤橋 進

 熱戦を見守り続けた聖火が静かに消え、東京五輪は幕を閉じた。柔道女子48㌔級の渡名喜風南選手の銀メダル、柔道男子60㌔級の高藤直寿選手の金メダルに始まるメダルラッシュの中、あっと言う間の17日間だった。目をつむると、選手たちの戦う姿、勝利の雄たけび、歓喜の涙、悔し涙、悔いのない笑顔などなど、走馬灯のように浮かんでくる。

 新型コロナウイルス蔓延(まんえん)下、無観客の開催など異例ずくめの大会だった。しかし、「スポーツの力」は、全く揺るがなかった。

 スポーツは、筋書きのないドラマ。選手たちは、4年に1度のオリンピックにそれまでの努力のすべてを注ぎ込む。その凝縮された時間を観戦・応援するわれわれも、共に体験させてもらう。

 目標に向かって諦めずに最後まで全力で戦い抜く姿から、感動を勇気をもらった。たとえ勝利を手にすることができなくても、その結果を潔く受け入れる姿をやはり美しいと感じた。そして勝敗を別にして、相手選手とたたえ合う姿は、ひときわ清々(すがすが)しい崇高な姿だ。オリンピックの価値、スポーツ本来の価値を実感する瞬間だった。

 今回はいろいろな意味で新しい歴史を創る大会となった。史上最多の27個の金メダルを含む58個のメダルを獲得し、目標とした金30個に限りなく近い大躍進を遂げたことは何より素晴らしく歴史的なことだった。そしてその中には、ゴルフ女子・稲見萌寧選手の銀メダル、バスケットボール女子の銀メダル、ボクシング女子フェザー級・入江聖奈選手の金メダルなど、初めてのメダル獲得となった競技があった。入江選手が、「歴史の扉を全開させた」と語ったが、今回は日本にとって多くの歴史の扉が開かれた。

 新競技のスケートボードでは、10代の最年少メダリストが誕生した。スポーツを楽しむ姿は、スポーツの原点を知らせてくれるとともに、日本の未来へ明るいイメージを描かせてくれるものだった。

 その一方で、お家芸である柔道が、9個の金メダルを含む12個のメダルを獲得する大健闘を見せた。伝統がしっかりと継承される一方で、新しい競技に挑むパイオニア精神を日本人が持っていることを示してくれたことは、日本の未来へ希望と勇気を与えてくれる。

 当たり前のことだが、大会が開かれなければ歴史の扉は開かれなかった。東京に集い、大会に参加した全ての国の選手を、そして彼らを支えた大会スタッフやボランティアの人たち全ての努力と献身を讃(たた)えたい。