美浜3号機再稼働、電力の安定供給につなげたい


 関西電力は運転開始から40年を超える美浜原発3号機(福井県美浜町)を再稼働させた。営業運転の開始は7月27日を予定している。40年超原発の活用を電力の安定供給につなげたい。

 40年超運転は事故後初

 東京電力福島第1原発事故の後、原則40年とされた運転期間を超える原発が再稼働するのは初めてとなる。美浜3号機は2011年5月に定期検査で停止しており、原子炉を動かすのは約10年ぶりだ。10年間停止していた原発の再稼働は過去に例がなく、安全面に十分に気を配る必要がある。

 原発事故後の原子炉等規制法改正で、原発の運転期間は原則40年とされた。ただ原子力規制委員会の認可を受ければ、1回に限り最長20年の延長が認められる。関電は15年、美浜3号機など3基について、再稼働の前提となる安全対策や運転延長に関する審査を申請し、16年に認可された。福井県の杉本達治知事は今年4月、3基の再稼働への同意を表明した。

 もっとも3基のうち高浜1号機(福井県高浜町)は、テロ対策施設が設置期限の6月9日までに完成せず、再稼働は当面見送られた。同2号機も安全対策工事が遅れており、再稼働のめどは立っていない。美浜3号機もテロ対策施設が未完成のため、期限の10月25日までに再び運転を停止する。

 経済産業省は今夏の電力需給について「ここ数年で最も厳しい」との見通しを公表した。見通しでは、今夏が10年に1度の猛暑となった場合、北海道と沖縄を除く各地域で電力供給の余力を示す予備率は7月に3・7%、8月も多くの地域で3・8%と安定供給に最低限必要な3%に近づくという。

 背景には、採算の悪化した古い火力発電所の休廃止が相次いでいることがある。経産省は今度の冬も含めて需給が逼迫(ひっぱく)する恐れがあるとしている。

 電力の安定供給を維持するには、運転開始から40年を超える原発の活用も求められる。40年超運転は欧米を中心に安全性を確認した上で広く実施されており、国際原子力機関(IAEA)などによると、世界の原発の約3割が該当する。日本でも定着させることができるよう、認可を受けた3基は必要な工事を急ぐべきだ。

 このほか、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)も40年超運転を認可されたが、地元自治体から再稼働の同意を得られていない。政府や電力会社は再稼働の必要性について丁寧に説明し、理解を広げていく必要がある。

 菅義偉首相は50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする方針を表明した。温室ガスを大量に排出する火力発電所への依存度を減らすためにも、原発の長期利用は不可欠だ。

 原発新増設や建て替えを

 新増設や建て替えが停滞する中、原発の経年は今後進み、運転開始から40年以下の原発は30年時点で27基、40年時点で8基になる。

 政府は今夏に改定されるエネルギー基本計画で、原発の40年超運転と共に新増設や建て替えを推進する方針を明示する必要がある。