香港避ける「公明新聞」 「国家安全法」に沈黙
中国に懸念を示す各党
公明党の機関紙「公明新聞」は日刊で一般ニュースも扱う。例えば8日付1面に「抗議デモ 全米50州で」との見出しで米国の黒人暴行死事件を取り上げ、3面「緯度経度 世界は今」というコーナーで「分断あおる大統領に批判」と解説している。
では、もう一つ世界が注目するデモ、香港の中国に対する抗議デモはどうか。中国は「一国二制度」の国際公約に反して香港を直接取り締まる「国家安全法」を5月の全国人民代表大会(全人代)で採択、これにも抗議デモが起きた。しかし同紙は全く掲載しない。
全人代の採択と菅義偉官房長官の遺憾表明の通信社記事は5月29日付に載るが、機関紙的言及がない。わずかに4日付1面コラム「北斗七星」で米中対立を扱い、「新型コロナウイルスへの対応や香港の統制強化を巡り、両国の非難合戦が白熱する」ことに、「米中両国の平和共存を切に願う」と述べただけだ。
同じく日刊の共産党機関紙「しんぶん赤旗」だが、志位和夫委員長が5月28日に中国に抗議した談話を日刊・日曜版とも掲載。1月党大会の党綱領改訂で中国批判に舵を切り、中国に懸念を持つ立憲民主党など他野党と歩調を合わせた。
自民党機関紙「自由民主」には載らなかったが、同党外交部会は5月29日、中国に対し「看過できない」との決議文を発し、安倍晋三首相は10日、「一国二制度」を前提に香港問題を先進国首脳会議(G7サミット)声明に盛り込む考えを示した。
一方、9日には衆院議員会館で「香港問題から国際的連帯を考える有志の会」のセミナーが開かれ、香港の運動家・周庭さんらがネットを通して「一国二制度」維持に日本の協力を求めた。自民、立憲民主、国民民主、日本維新の会、共産、無所属の議員が参加したが、公明からはない。
公明党は結党当時からの親中政党だ。日中平和友好条約40周年の2018年に月刊「公明」9月号は、同年を「公明党の創立者である池田大作・創価学会名誉会長による『日中国交正常化提言』発表から50年の佳節」とも書いた。とはいえ、香港の民意は民主主義維持にある。香港の「大衆のために」中国を諭すべきだ。