オバマ米大統領、もうレームダック?

オバマケア混乱で信頼失墜

 オバマ米大統領が2期目の政権運営をスタートさせてからまだ1年もたたないが、早くもレームダック(死に体)化しているとの指摘が出ている。医療保険改革法(通称オバマケア)をめぐる失態で、支持率は急落し、身内の民主党議員の間でも「オバマ離れ」が進行。求心力を失いつつあるオバマ氏が、残りの任期で重要課題を手掛けるのは困難との悲観的な見方が広がっている。
(ワシントン・早川俊行)

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14日、医療保険改革法をめぐる混乱を受け、ホワイトハウスで記者会見するオバマ米大統領(UPI)

 キニピアック大学が12日に発表した世論調査によると、オバマ氏の支持率は2009年の就任以降、最低となる39%を記録。不支持は54%に上った。

 オバマ氏を窮地に追い込んでいるのは、皮肉にも政権最大の業績だったはずのオバマケアだ。10月に開設された保険加入申し込みのウェブサイトは不具合が解消されず、同月の加入件数は目標の2割程度に低迷している。

 特に、致命的打撃となったのが、既存の保険契約がオバマケアの要件を満たさず、保険会社から解約通知を受け取る人が続出していることだ。オバマ氏はこれまで、「今の医療保険が気に入っているなら、そのまま継続できる」と繰り返し強調していただけに、解約通知を受け取った国民からは怒りの声が噴出している。

 オバマ氏の支持率が低下したことはこれまでもあったが、好感度は常に高い水準を維持してきた。だが、同大学の世論調査では、過半数の52%がオバマ氏を「正直でない・信用できない」と回答。10月1日発表の前回調査に比べ、11ポイントも増加しており、オバマケアの失態は、オバマ氏の強みだった誠実なイメージまでも蝕(むしば)んでいる。

 このため、オバマケアを2005年に米南部を襲った大型ハリケーン「カトリーナ」に例える見方まで出ている。ブッシュ前大統領はカトリーナへの対応の不手際を激しく叩かれて求心力を失い、目立った成果を残すことなく2期目を終えた。同じように、オバマケアをめぐる混乱は、オバマ氏にとって取り返しのつかないダメージだというのだ。

 こうした見方に対し、民主党全国委員会のドンナ・ブラジル副委員長は「カトリーナの時とは違う」と反論。オバマ氏の側近、デービッド・プラフ大統領上級顧問も「3~4カ月後には状況は変わっている」と主張した。

 14日に記者会見したオバマ氏は「医療保険改革法の導入で失敗を犯した」と認めるとともに、解約される既存の保険契約について、保険会社に1年間の延期を認める措置を発表した。

 だが、来年11月の中間選挙まで1年を切っており、民主党内ではオバマ氏と距離を置こうとする議員が増えている。15日には、野党共和党が提出したオバマケアの一部を見直す下院の法案に対し、民主党下院議員の約2割に相当する39人が“造反”し、賛成票を投じた。

 米議会は現在、上院が民主党、下院は共和党が過半数を制している。来年の中間選挙で「ねじれ」を解消し、残り2年で実績づくりに邁進する、というのがオバマ氏の描く戦略だった。だが、オバマケアを支持した民主党が逆風下の選挙戦を強いられるの確実な情勢で、オバマ氏のシナリオは崩れつつある。

 ABCテレビの政治アナリスト、マシュー・ダウド氏は「歴史を見れば、2期目の大統領が信頼、信用、支持を失った時、もう取り戻すことはできない」と指摘、オバマ政権のレームダック化は避けられないとの見方を示す。

 オバマ氏は移民制度改革や地球温暖化対策、銃規制強化などを2期目の重点課題と位置付けているが、オバマケアの混乱が収束するまで他の課題に本腰を入れる余裕はない。しかも、指導力、求心力を失いつつあるオバマ氏が成果を上げられるかどうか、懐疑的な見方が広がっている。