ヒラリー氏の財団に莫大な外国資金
米大統領の適性に疑問符
中国政府に近い企業も寄付
ヒラリー・クリントン前米国務長官が家族で運営する慈善団体「クリントン財団」が、中国政府に近い企業など海外から多額の寄付を受け取っていることが問題化している。クリントン氏は2016年大統領選の民主党最有力候補と目されているが、海外マネーとの深いつながりは大統領としての適性に疑問を投げ掛けている。
(ワシントン・早川俊行)
財団はヒラリー氏の夫ビル・クリントン元大統領が退任した2001年に設立され、気候変動問題やエイズ治療、女性の権利向上などに取り組んでいる。“クリントン・ブランド”の集金力は抜群で、ワシントン・ポスト紙によると、これまでに20億㌦(約2400億円)近い資金を集め、「世界で最も急速に拡大する慈善団体の一つ」(同紙)となっている。
財団の収入で大きな割合を占めるのが、海外からの寄付だ。同紙によると、100万㌦以上の資金提供者の3分の1、500万㌦以上の資金提供者の半数以上が、外国の政府や企業などだという。
これについて、財団は「世界中から支援を受けているのは、我々の活動が多くの人々の生活を向上させているからだ」と説明、外国政府・企業は財団の慈善事業に賛同して資金を提供しているだけで、政治的意図はないと主張する。
だが、外国政府・企業が善意だけで多額の寄付をしているとは考えにくい。米国では海外からの政治献金が禁じられているが、財団は米国内で大きな影響力を誇るクリントン夫妻への合法的な献金窓口となっており、これが海外マネー流入の背景になっている。
ヒラリー氏が国務長官に就任する際、財団は外国政府からの寄付を制限した。だが、同紙によると、長官在任中、財団はクウェート、カタール、オマーンなど7カ国の政府から寄付を受け取っていた。この中で倫理規定に違反していたのが、2010年にアルジェリア政府から受け取った50万㌦の寄付だ。当時、アルジェリア政府は国務省へのロビー活動に力を入れており、寄付は同国の人権侵害に対する批判を和らげる狙いがあった可能性が高い。
財団は外国政府からの寄付を制限したものの、海外の企業・個人からの寄付は従来通り受け付けていた。ヒラリー氏の国務長官退任後、財団は外国政府からの寄付受け入れを再開。13年に過去最高となる2億6200万㌦の資金を集めるが、これはヒラリー氏が大統領選出馬の準備を開始したことが、寄付金急増の大きな要因とみられている。
CBSテレビによると、財団は13年、中国政府に近い日林実業集団から200万㌦の寄付を受ける約束を取り付けている。同集団トップの王文良氏は、全国人民代表大会(全人代=国会)代表で、同集団が機密性の高い在米中国大使館の建設工事を請け負ったことは、中国政府の情報機関、国家安全部との緊密な関係を示すものとされる。
ヒラリー氏は最近、国務長官在任中に個人のメールアドレスとサーバーを公務に使用していた問題で厳しい追及を受けており、不都合なメールを隠しているとの疑惑が広がっている。これについて、クリントン夫妻を長年取材してきたナショナル・ジャーナル誌のロン・フォーニアー氏は、メールには米企業や外国政府から財団への寄付をめぐるやりとりが含まれている可能性が高いと指摘する。
ヒラリー氏は国務長官としての外交経験が大統領選で強力な武器になるとみられていたが、逆に海外マネーとの不透明な癒着が外交政策の中立性に疑問を投げ掛ける展開になっている。