キリスト教保守派、「復権」目指し米首都で年次会合
米野党共和党の強力な支持基盤であるキリスト教保守派が主催する「バリューズ・ボーター・サミット」が先週末、ワシントン市内で開かれた。政治的影響力に陰りが見られるキリスト教保守派だが、リベラルなオバマ大統領の政権運営に不満を募らせており、2016年の次期大統領選に向けて「復権」を目指している。(ワシントン・早川俊行、写真も)
価値共有する候補擁立がカギ
同サミットは、人工妊娠中絶や同性結婚など社会問題を重視するバリューズ・ボーター(価値有権者)の声を国政に反映させることを目的に毎年開催されている。今年は草の根活動家ら約2000人が参加。彼らの支持を取り込もうと、大統領選出馬をうかがう共和党の有力者たちがスピーチした。
テッド・クルーズ上院議員は、オバマ政権・与党民主党が信教の自由を無視し、宗教系非営利組織や企業に職員の避妊費用を強制負担させようとしていることについて、「現代の民主党は極度の過激派政党だ」と痛烈に批判した。
また、ランド・ポール上院議員は「生命を尊重しない文明は長続きしない」と、中絶反対を強調。マイク・ハッカビー前アーカンソー州知事は、連邦判事が同性婚を禁じた各州の規定に違憲判決を下していることを「ナンセンスだ」と批判し、同性婚を押し付ける司法に「ノーと言う必要がある」と訴えた。
このほか、リック・サントラム元上院議員、ボビー・ジンダル・ルイジアナ州知事、サラ・ペイリン前アラスカ州知事らが登壇した。
参加者が共和党の大統領候補を選ぶ模擬投票では、クルーズ氏が得票率25%で昨年に続き1位を獲得。政治経験はないが、保守派論客として注目を集める元神経外科医ベン・カーソン氏が20%で2位、3位は12%のハッカビー氏だった。
これに対し、党エリート層が推す穏健派のクリス・クリスティー・ニュージャージー州知事とジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は、それぞれ0・1%、0・2%と低迷。キリスト教保守派が穏健派候補をいかに嫌っているかを示すものだ。無党派や中南米系の取り込みを狙い、中道寄りの候補擁立を目指すエリート層との深い溝を改めて浮き彫りにした。
米人口の4分の1を占める福音派を中心とするキリスト教保守派は、大統領選の行方を左右する一大勢力だ。2000年、04年大統領選では、ブッシュ前大統領勝利の原動力となるなど、共和党内で大きな影響力を発揮してきた。
だが、08年はジョン・マケイン上院議員、12年はミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事と、過去2回の大統領選は党エリート層が推す穏健派が共和党候補になったため、キリスト教保守派の集票力は大幅に低下。また、同性婚を容認する世論が急速に拡大するなど、社会全体がリベラル化傾向を強めていることもあり、同派の影響力は以前より薄れている。
これに対し、同サミットの主催団体「家庭調査協議会」のトニー・パーキンス会長は、本紙の質問に、大統領選でキリスト教保守派の存在感が低下したのは、候補者に問題があったからだとの見方を示した。
パーキンス氏は「保守的なメッセージを明確かつ簡潔に訴える候補であれば、熱狂的な支持を得られる」と強調。「共和党は支持基盤なしには勝てない。08、12年に起きたことを16年も繰り返さないことを祈る」と述べ、次期大統領選では草の根保守層と価値観を共有する候補を擁立すべきだと主張した。
一方、ハッカビー氏は「前回大統領選で福音派の投票率が10%高ければ、別の大統領になっていた」と述べ、キリスト教保守派がもっと積極的に投票すれば、国の方向性を変えられるとの見方を示した。