輸出規制批判、文大統領に失望を禁じ得ない
日本政府が韓国に輸出してきた半導体材料3品目の輸出管理を強化し、これに韓国側が反発している問題をめぐって韓国の文在寅大統領が「両国関係発展の歴史に逆行する、賢明でない仕打ち」と日本を批判した。日本に弱腰ではいられない国内向けメッセージが多分に含まれたものだろうが、問題解決に何の助けにもならない発言だ。相変わらず事態の推移も原因も直視しようとしない姿勢には失望の念を禁じ得ない。
「重大な挑戦」と指摘
輸出規制はこれらの材料に軍事転用の恐れがあり、実際に輸出先の韓国で不適切な事案が確認されたことが最大の原因だ。日本はこの問題と関連し韓国に報告と協議を繰り返し要請したが、一切応じなかった。日本としては予防的措置が不可欠な状況だった。
韓国内では「日本による経済報復」との見方が広まっている。元徴用工訴訟で大法院(最高裁)が日本企業への賠償命令を確定させたことに対する韓国政府の姿勢を不服として報復に踏み切ったというものだ。21日投開票の参議院選挙を前にした有権者向け強硬策だとの見方も多い。
だが、根本には日本の韓国への不信があるという認識が全く欠けている。文大統領は歴史問題と安全保障・経済は別々に対応するツートラック政策をいまだに口にするが、実際には合意を無視して歴史問題を蒸し返し、それが両国関係全般に影を落とした。その上、関係をここまでこじらせた原因の多くをつくり出した韓国が自己正当化と責任転嫁に終始している。
文大統領は、今回の措置が「国際輸出統制体制を模範的に履行」し、「国連安保理決議を順守し制裁の枠組みの中で南北関係発展と朝鮮半島平和のため総力を挙げている」韓国政府に対する「重大な挑戦」と指摘した。
しかし、輸出統制を履行し対北制裁を厳守していたのであれば日本が輸出規制に乗り出す必要はなく、韓国が北朝鮮の瀬取りや石炭密輸などに関与している疑惑も生じない。
文大統領は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談や米朝首脳会談など朝鮮半島の融和を進めようという「韓国政府と国際社会の共同努力」に日本が「不信を惹起(じゃっき)」しているとも述べた。南北融和ムードを自画自賛するのは自由だが、北朝鮮を非核化に向かわせられず、逆に制裁解除ばかり要求される現実を見ないまま、日本がこれを支持しないと批判するのはお門違いだ。
輸出規制は「半世紀にわたり蓄積してきた韓日経済協力の枠組みを壊すもの」という文大統領の言葉にも驚かされる。いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる日韓合意に基づき設立された関連財団を解散させ、1965年の日韓請求権協定を反故にする司法判断を事実上容認するなど、両国合意を何度も踏みにじってきたのは文大統領自身だ。
信頼回復へルール守れ
措置撤回に必要なことは両国が世界貿易機関(WTO)で意見を開示し合うことではなく、韓国が日本との信頼回復へルールを守ることだ。経済への打撃を心配するのであればまずそこから始めるべきではないのか。