韓国与党、20年政権構想に意欲

親北反日 固定化の恐れ

 親北反日路線を敷く左派系の韓国与党・共に民主党が20年政権構想を推し進めている。来年4月の総選挙で与党が勝利した場合、それを足掛かりに憲法改正を行い、大統領任期を現在の「5年再任なし」から「4年再任1回のみ可能」に変更させ、長期政権に道を開こうというものだ。国内保守派は安保危機や景気低迷がさらに深刻化するなどとしてこれを阻止する構えだ。(ソウル・上田勇実)

来年総選挙勝てば改憲へ

 同構想は昨年7月、与党最多の7選国会議員である李海瓚氏がぶち上げたもの。李氏は「(左派の)金大中、盧武鉉両政権の10年間では政策の根を下ろすことができなかった」「20年くらい執権する計画を立てて実践しなければならない」などと述べ、翌月の党内選挙で代表(党首)に選ばれた。

自由韓国党の議員ら

今月2日、ソウル駅前で与党の20年政権構想などに反対する野党・自由韓国党の議員ら=韓国紙セゲイルボ提供

 李氏はその後、構想に向けタスクフォース(TF)を発足させ、今年に入ってからは「20年では短い」「(2022年の大統領選で)再び政権を握れば新しい100年を開く土台を作ることができる」などの発言で水位をどんどん上げている。

 長期政権で与党は何をしようとしているのか。まず挙げられるのは徹底した保守たたきだ。すでに「積弊」とレッテル貼りされた朴槿恵前大統領、李明博元大統領の2人が収賄容疑などで逮捕・起訴され有罪判決を受けたが、「保守狩り」はさらに延々と続くとみられる。

 韓国左派には歴代大統領を生み出した保守地盤、南東部の慶尚道が経済的恩恵を独占したことへの恨みが残っている。保守への対抗意識が強い南西部の全羅道が左派の地盤になった。

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 左派が政権を取った現在、至る所で全羅道出身者が優遇される光景が広がっている。徹底した階級意識がある軍でも昨年、全羅道出身者を新しい海軍参謀総長に飛び級式に昇進させ波紋を広げた。

 一方、外交路線では親北反日が長期にわたり続く恐れがある。これを支えるのが偏った歴史観を持ち理念志向が強い学生運動上がりの政権側近たちだ。

 左派の伝統的政策である「南北融和による朝鮮半島の平和定着」は踏襲され、北朝鮮側さえ受け入れるなら金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談が繰り返される可能性が高い。それが北朝鮮による見せ掛けの非核化を手伝う結果を招き、北朝鮮に完全非核化を迫る日米との連携に深刻な亀裂を生じさせ、さらには韓国が自由民主主義陣営の一員と見なされなくなる恐れがあっても、親北を続けることに「意義」を見いだそうとするだろう。

 反日路線ではいわゆる従軍慰安婦問題や今泥沼化している元徴用工訴訟など歴史認識問題で反日姿勢を維持し、日本との関係改善より国内世論重視の立場を鮮明にさせるとみられる。国内保守派攻撃の材料として「保守派=親日派」というフレームを利用し、日韓未来志向が掛け声に終わるのは避けられない。

 先月、与党は長期政権構想の実現に向けた第一歩として、来年4月の総選挙で地域区・比例代表区の比率を与党有利に働くように変える選挙法改正案を国会で成立させるため、法案をファストトラック(迅速処理案件)に指定しようとした。

 仮に法案が成立して総選挙で与党と左派系野党を合わせた議席が3分の2を上回れば、これらの議員の賛成と国民投票で過半数の賛成を得れば改憲が可能になる。大統領任期4年再任制への移行が実現するわけだ。

 改憲による大統領再任制はもともと大統領とその周辺への極端な権力一極集中に伴う弊害を是正する目的で保守政権下でもその必要性が叫ばれてきた。だが、今の与党は逆に権力固めの手段として捉えている節がある。

 改憲は別の意味で危険だという見方もある。ある韓国保守系論客は「改憲を通じ金正恩政権と一緒に北朝鮮主導の南北統一の初期段階である南北連邦制を実現させようとしている。そうなれば朝鮮半島情勢は一挙に不安定化するだろう」と警鐘を鳴らす。

 野党の猛反発に遭い選挙法改正案の行方は不透明だが、与党は次の一手を打ってくるとみられる。