「inソウル」目指す受験生


地球だより

 過酷な受験戦争による社会的歪(ゆが)みを風刺したテレビドラマ「SKYキャッスル」が昨年から今年にかけて放映され話題になった。「SKY」とは入試難易度で頂点をなすソウル大学、高麗大学、延世大学の英文表記の頭文字を並べたもので、自身も有名大卒で富裕層となり、子供の課外教育費を惜しまない親たちが多く住む「キャッスル(=城)」のような地域を舞台に繰り広げられる、ミステリーを交えた親子の「SKY」受験奮闘記だ。

 韓国は「SKY」の3校をはじめソウルにある有名大学を「inソウル」と称し、「地方大」と一くくりにされるソウル以外にある大学とは区別される。難易度が高く、卒業後の就職も良好な「inソウル」は格上、卒業しても大手企業への就職が難しいとされる「地方大」は格下という暗黙の格差がある。受験生とその親、予備校関係者などが一丸となって「inソウル」を目指すのだが、結果はだいたい「inソウル」の倍近くが「地方大」へ行き、劣等感に苛(さいな)まれることになる。

 だが、そんな韓国にも高卒で社会に出て大統領まで上り詰めた人物が2人いるではないか。時代が違うとはいえ、財閥・現代を一代で築き上げた鄭周永氏も小学校しか出ていない。ドラマ最終回では登場人物が有名大学合格以外の別の道を選ぼうとする姿も描かれていた。レールの上を一等を目指し突っ走ることだけが人生の成功につながるわけではない。多くの韓国人はとっくにそれに気付いているが、現実がそうさせないのだろう。

(U)