北の「瀬取り」、各国で歩調合わせ取り締まれ


 韓国外交部当局は、韓国国籍の船舶1隻が国連安全保障理事会による対北朝鮮制裁決議に違反した疑いで、昨年10月から釜山港に係留中だと明らかにした。海上で積み荷を移し替える、いわゆる「瀬取り」を放置していては、北朝鮮の非核化に向けた国際社会の制裁措置が意味をなさない。断じて許してはならない行為だ。

非核化への強い意志

 北の瀬取りは、北朝鮮が国連と国際社会の制裁を避けて、東シナ海など公海上で第三国船籍の船舶から物資を移し替える行為だ。国連安保理傘下の対北朝鮮制裁委員会は「北朝鮮の瀬取りが精巧になり、その範囲と規模も拡大した」と報告書で強調しており、各国の取り締まりを要請した。

 係留中の船舶について韓国当局は調査中であり、「安保理決議の適用については米国および国連制裁委員会と協議中」だと伝えた。瀬取りは南北交流協力法にも違反するが、韓国が国連制裁違反の疑いで出港を禁じたのは今回が初めてだ。

 日本政府は、1~2月にドミニカ、ベリーズ、中国、モルディブ船籍タンカーが北朝鮮船籍タンカーに横付けし、瀬取りに関与した合計4件の事例を、写真とともに公開した。

 ハノイ米朝首脳会談後の3月にも、海上自衛隊の補給艦「おうみ」が2日未明、中国・上海の南およそ390㌔の公海上で、船籍不明の船舶が北朝鮮船籍のタンカーに横付けしホースを接続していた様子を確認した。また外務省も28日、東シナ海の公海上で北朝鮮の船籍に物資を積み替える瀬取りが行われた疑いがあるとして、その写真を公開し、国連に通報した。

 さらに、米インド太平洋司令部は、米沿岸警備隊所属の新鋭の警備艇「バーソルフ」が東シナ海で北朝鮮の瀬取りなどを取り締まるため、佐世保港に到着したことを明らかにした。

 米国本土の沿岸警備隊に所属する警備艦艇を東シナ海に派遣し、朝鮮半島周辺海域に配備して北朝鮮による違法な瀬取りの取り締まりを行うのは意義あることだ。米沿岸警備隊は海洋での密入国者捜索と逮捕、犯罪者追跡、麻薬・密輸取り締まりなどが主な任務だが、太平洋を越えて朝鮮半島周辺に配備されるのは極めて異例だ。

 東シナ海は現在、米国のほか英国・カナダ・豪州などが艦艇と航空機を派遣し、瀬取りの取り締まりに参加している。とりわけ米国の行動は、北朝鮮に海上封鎖レベルでの制裁措置を強め、完全な非核化に応じさせるという強い意志表明である。

 2月末のハノイ米朝首脳会談の決裂を受け、国際社会の制裁決議を継続し、実質的に意味あるものにしなければならない。

諸国と共に摘発せよ

 米国が東シナ海、朝鮮半島沖に沿岸警備艇まで派遣する事態に至ったことは、日本はもとより韓国を含む近隣諸国としては、公海上における対北朝鮮封鎖の一環として、北朝鮮船の瀬取り摘発に積極的な協力関係を構築することが求められる。

 北朝鮮への圧力の実効性を高めるためには、国際社会の対北朝鮮制裁に各国が誠実に歩調を合わせることが緊要である。