米朝交渉に非核化原則強調
2回目の米朝首脳会談がベトナムで行われるのを前に、ディック・チェイニー元米副大統領、ニュート・ギングリッチ元米下院議長らが、韓国・ソウルで開かれた国際会議で講演し、トランプ米政権に北朝鮮と交渉する上で、(1)強い意志を持って非核化など重要な内容で妥協しないこと(2)強固な米韓同盟関係を見せつけること――などを求め、北朝鮮ペースの交渉に陥らないように警鐘を鳴らした。(ソウル・岸元玲七)
「世界サミット2019」で元米副大統領ら
北ペースに陥る妥協警戒
チェイニー氏はブッシュ(子)政権時代の副大統領、ギングリッチ氏はクリントン政権時代に下院で多数派の共和党を率いて議長を務めた。
両氏が講演したのは、8日の「世界サミット2019」(主催・UPF)開幕式。約40人の元・現職国家首脳をはじめ110カ国から閣僚や国会議員、宗教指導者ら約1200人が参加した。世界平和の実現について話し合う同会議では、韓国と北朝鮮が軍事境界線で対峙する冷戦構造が残る朝鮮半島情勢の行方を占う上で、27~28日にベトナムで開催される2回目の米朝首脳会談が焦点になった。
チェイニー氏は「平和は無償で与えられるのではなく、多くの犠牲が必要だ」と指摘し、米朝首脳会談について「朝鮮半島は平和の重要な分岐点になる」との認識を示した。また、「米国務省の外交官たちは絶え間ない努力で北朝鮮の非核化を要請してきた。交渉に臨む際は、より長期的な結果を考えなくてはいけない」と強調した。
米朝会談を前に、同氏は冷戦時代末期にブッシュ(父)政権で国防長官として旧ソ連と交渉したことを振り返り、「当時の経験から、協議の過程において(成果だけを考えて)重要な内容を妥協してはいけないという教訓を学んだ」と述べ、実務者らが「北朝鮮との交渉において強い意志を持たなくてはいけない」と注文を付けた。
特に非核化について、完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)の目標を確認することを求め、トランプ政権が小さな成果のために原則を無視して交渉に臨む失態を犯してはならないと警告した。
さらに、米韓同盟の重要性についても言及。北朝鮮に強固な米韓同盟関係を見せつけることが今後の協議において有利になるとの認識を示し、「米国と多くの同盟国が維持してきた強固な関係は、朝鮮半島の自由を守り、安全保障の上で相当重要だ」と語った。
一方、ギングリッチ氏は「2回目の米朝首脳会談でトランプ大統領は、必ず韓国の平和と繁栄を保護すると述べるだろう」と明らかにした。続いて、金正恩朝鮮労働党委員長が「独裁よりもより良い方法があると気づき、韓国のように民主主義国家として経済発展し繁栄した方が良い道だと認識させられれば、北朝鮮が変わる可能性がある」と展望した。
また、同氏の父親が1950年、朝鮮戦争に参戦したことを紹介し、「父が生きていたならば今日の韓国の発展には驚くだろう。この発展は、国家的次元の勝利だ」と称賛。さらに、「非核化だけでなく宗教を自由に信じることのできる北朝鮮にならなくてはいけない」と述べ、平和を築くためには宗教の役割も重要だと主張した。
同会議では、欧州連合(EU)のジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ前欧州委員会委員長(ポルトガル元首相)も講演。「EUの歴史が朝鮮半島の平和に役立つだろう」と述べ、「平和を築くための環境をつくっていくことが重要だと多くの事例から学んだように、当事者の意思が何よりも必要だ」と強調した。
韓国政府の趙明均統一相は同会議開幕式で述べた祝辞の中で、2回目の米朝首脳会談について「国際社会と緊密に疎通し会談を成功させ、韓半島の恒久的な平和のため最善を尽くす」と語った。韓国側の期待の高まりは隠せないが、対朝交渉にはチェイニー氏が指摘した原則を崩すことなく、同盟国同士の強い結束が必要とされるだろう。