韓国の対北融和、擁護では非核化達成できない
韓国の文在寅大統領が海外メディアとのインタビューで、非核化に取り組んでいる北朝鮮の努力に国際社会は応じるべきとの見解を示した。2回目の米朝首脳会談を前に双方の協議が難航していることからも推察できる通り、北朝鮮が本気で非核化に踏み出したとはまだ確認されていない。韓国が現段階で北朝鮮を擁護するのは時期尚早だ。北朝鮮に非核化を迫る国際社会の連携を乱すものでしかない。
楽観的な文在寅大統領
文大統領は英BBCのインタビューで、米国について「北朝鮮の非核化がある程度の段階に達すれば、経済制裁を徐々に緩和することも検討すべき」と語った。また仏フィガロ紙の書面インタビューでは、北朝鮮は本気で非核化に取り組んでいるとした上で「国際社会はその努力に応えるべき」と述べた。
文大統領としては、米国をはじめとする国際社会に向け非核化問題解決への所信を表明した形だ。先月の平壌共同宣言で南北が確認した「民族自主と民族自決の原則」に沿い、朝鮮半島問題を自分たちが主導して解決したいという思いもにじんでいる。だが、北朝鮮の立場を代弁して国際社会を説得しようとしており、北朝鮮に非核化を迫る気概は感じられない。
文大統領は、完全非核化を見届ける前でも北朝鮮が体制保証に向け要求している終戦宣言や制裁解除に応じれば、それがゆくゆく非核化を促すと考えているようだが、あまりにも楽観的ではないか。対北融和政策でその後押しをするつもりだろうが、融和政策を取り結局は北朝鮮の核・ミサイル開発に歯止めを掛けられなかった金大中、盧武鉉両政権の前例もある。
これまで北朝鮮は、米国による「相応の措置」を条件とする寧辺核施設の「永久的廃棄」や、豊渓里核実験場の解体を確認してもらう査察受け入れを表明した。東倉里のミサイル施設も「永久的廃棄」を約束した。
しかし、核弾頭と弾道ミサイル、移動式発射台の数や保管場所など全容は明らかになっていない。核・ミサイルを隠蔽(いんぺい)したまま、公開されたものだけ廃棄や査察に応じるつもりではないかという疑いは払拭(ふっしょく)できない。
文大統領は対北経済協力実施の時期について「国連制裁が解除されるか南北協力が例外として認められた時」と述べた。2月の平昌冬季五輪では米財務省の制裁対象だった北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の妹、金与正氏や米韓などの制裁対象の金英哲党副委員長が訪韓し、韓国独自の制裁「5・24措置」で入港禁止の北朝鮮船舶「万景峰号」が韓国の墨湖港に入港・停泊した。いずれも例外措置で、対北制裁網に穴が開いた側面がある。
先月の南北首脳会談では経済協力でも合意し、これらが本格化すれば制裁は有名無実化しかねない。もはや制裁解除ありきで動いているとしか思えない。
制裁緩和ならカード失う
北朝鮮の非核化には依然として制裁を含む圧力が必要だ。先に制裁を緩和し、終戦宣言に応じれば、非核化を迫る重要なカードを失ってしまう。文大統領は国際社会よりもまず先に数々の合意を反故にしてきた北朝鮮を説得すべきだ。