北朝鮮で建国70年行事、後ろ盾に中露 「核強国」主張
北朝鮮で9日、建国70年を祝う行事が行われたが、中国、ロシアから政府要人を迎え入れ、「核強国」入りを主張するなど非核化の意志を疑わせる強硬姿勢が目立った。一方、軍事パレードでは大陸間弾道ミサイル(ICBM)級を登場させなかった。米国との対話を意識して自制したのではないかとの見方が広がっている。
(ソウル・上田勇実)
金正恩氏、金永南氏に演説任せる
年内終戦宣言へ自制か
朝鮮中央通信によると、建国記念日の前日、朝鮮労働党の中央委員会と中央軍事委員会、国務委員会、最高人民会議常任委員会、内閣の5機構は建国70年を期し、金正恩朝鮮労働党委員長に送る共同祝賀文を連名で採択した。
祝賀文は「われわれ共和国は数十年を前倒しして世界が公認する強国の戦列に堂々と並ぶようになった」とし、直接「核」には言及しなかったものの、事実上の「核強国」入りを主張した。4月の南北首脳会談や6月の米朝首脳会談で繰り返し確認された「朝鮮半島の完全非核化」とは相いれない姿勢と言える。
建国70年は北朝鮮の「後ろ盾」となってきた中国、ロシア両国による祝賀演出が目立った。
まず中国は習近平国家主席が祝電で「中朝親善」の重要性に触れ、「中朝関係の長期的発展により両国にさらに多くの福利と地域の平和・安定を促す用意がある」とし、今後も経済・安全保障の両面で北朝鮮を支え続ける考えを示した。
習主席の特使として訪朝した共産党序列3位の栗戦書・政治局常務委員はこの日、金日成広場で行われた大規模軍事パレードでひな壇に立ち、金正恩氏と手を取り合って親密ぶりをアピールした。
ロシアもプーチン大統領が祝電で「双方の対話と諸分野の協力拡大が朝鮮半島と北東アジアの安定・安全を強化することに寄与する」と指摘。金正恩氏は訪朝した政権ナンバー3のマトビエンコ上院議長と会談し、「朝鮮半島の平和と安全を守るため緊密に協力」していくことで一致したという。
この日、関心の的となった軍事パレードは今年2月8日の「軍創建日」に行われたものとほぼ同規模にとどまり、米本土を射程に置くICBMは一切登場しなかった。これをめぐり休戦状態にある朝鮮戦争(1950~53年)の終戦宣言を年内に実現させようとしている北朝鮮が米国との対話の枠組みを維持するため、いたずらに米国を刺激しないよう自制したとの見方が出ている。
米国意識は、軍事パレードの際の演説を金正恩氏自らが行わず、金永南・最高人民会議常任委員長に任せたことにも表れている。
今回の建国70年は3代世襲体制を改めて正当化する場にもなった。
北朝鮮は今年1月1日、金正恩氏が新年辞の演説で今回の建国70年を「偉大なる首領様(故金日成主席)と偉大なる将軍様(故金正日総書記)による最大の愛国遺産である社会主義のわが国を世界が認める戦略国家の地位に堂々と押し上げた人民が盛大に記念する大慶事」と位置付けていた。
そして建国70年のこの日朝、金正恩氏は祖父と父の遺体が永久保存状態で安置される平壌の錦繍山太陽宮殿を側近を大挙従えて参拝した。
建国70年では大規模なマスゲームが5年ぶりに復活し、月末まで続けられるとも言われる。仮に来週、南北首脳会談のため平壌を訪問する韓国の文在寅大統領が観覧することなれば「体制宣伝に利用された」との批判を浴びるのは必至だ。