韓国・文政権、高支持率にも危うさ

 韓国の文在寅大統領の支持率が就任から4カ月経過しようとする今なお70%台という高い水準を維持している。昨年の国政介入事件の反動や文大統領の人柄・姿勢が支持された結果とみられるが、実はこの高支持率こそ危険をはらんでいると警鐘を鳴らす声もある。さて、その危険とは…。
(ソウル・上田勇実)

世論左傾化、半島危機に非力
「左派無罪」で親北国家に熱狂も

 韓国ギャラップが先月末、全国満19歳以上の男女1003人を対象に携帯電話を通じインタビュー形式で実施した世論調査によると、文大統領の国政運営について「よくやっている」が76%を記録、「よくやっていない」の16%を大幅に上回った。

800

3日、ソウルの大統領府で行われた国家安全保障会議(NSC)で発言する文在寅大統領(AFP=時事)

 6月以降の3カ月間(週単位)の支持率推移を見ると70%台から80%台で、各種世論調査も同様だ。肯定評価の理由としては「国民との疎通ができている」「脱権威主義」「積弊清算に取り組んでいる」などが上位を占め、朴槿恵前大統領との比較対照的な要素が目立つ。

 それにしても北朝鮮の武力脅威がエスカレートし、3日には6回目の核実験に踏み切るなど「半島危機説」が現実味を増す中、その解決に向け必ずしも十分なリーダーシップを発揮しているとは言えない文政権に対する失望、懸念があまり反映されないのはなぜだろうか。

 ある韓国メディアの外交・安保担当記者は「韓国人の理念離れ、北の危機に対する不感症は相当なもの」と分析する。だが、高支持率の背後にはもっと大きな問題が潜んでいるという。趙佑石KBS(韓国放送公社)理事はこう指摘する。

 「朴槿恵大統領弾劾と文大統領当選を境に韓国国民の大多数が左傾化し、それをもって文大統領は8月15日の光復節(日本統治からの解放記念日)演説で『ろうそく革命で開いた国民主権時代』『直接民主主義』という表札まで掲げた。権力と国民の前例なき癒着だ」

 北朝鮮による各種の威嚇に対し日米両首脳が「今は対話ではなく圧力をかける時」と強調したにもかかわらず、文大統領が北との対話路線を見直さないのは世論の左傾化にあぐらをかいているからと言えなくもない。

 文大統領が演説で指摘した「ろうそく革命」という言葉にしても、これに国民が違和感を抱く様子はあまり見られなかった。北朝鮮が国営メディアやビラなどで文大統領誕生に期待を寄せる際に使用した言葉でもあった「ろうそく革命」を韓国国民が容認したのは驚きに値する。

 問題はこれに終わらない。「周囲の人たちと話してみると文大統領の支持率が簡単に下がるとは思えない」(大手紙・朝鮮日報論説委員)のが現段階の見通しで、仮にそうなった場合について趙理事は「すでに“左派無罪”“右派有罪”の環境に適応する準備を終えた国民は文政権が失政を繰り返しても支持し続け、準革命的な政治秩序をつくろうとしても大衆は熱狂するかもしれない」と警鐘を鳴らす。

 「準革命的政治秩序」とは要するに親北国家建設の準備。例えば、北朝鮮ペースの南北統一を韓国政府が初めて認めたとの批判が残る2000年の南北共同宣言を踏襲した第3回目の南北首脳会談開催だ。文政権の側近メンバーを見れば、最初から南北首脳会談に意欲的だったことは一目瞭然である。

 保守系の最大野党・自由韓国党の金鎮台議員は文大統領の高支持率について「亡命でもしたい気分」と述べた。