韓国保守2党、立直しに苦戦

 韓国保守系野党の自由韓国党と正しい政党が態勢立て直しに苦戦している。昨年の国政介入事件の影響で敗北した5月の大統領選以降、新しい執行部体制などで仕切り直しを図ったが、支持率は回復せず、内部も分裂気味だ。70%台という高支持率を維持する文在寅大統領とは対照的だ。
(ソウル・上田勇実)

革新委発足も「極右」批判
朴前大統領派に裏切者扱い

 自由韓国党は今月、党立て直しに向け外部の人たちで構成する革新委員会を発足させた。委員長には盧武鉉政権時の政権奪還運動で先頭に立った市民団体、ニューライト全国連合の共同代表などを務め、父親が朴正煕元政権で青瓦台(大統領府)の政務首席を務めた柳錫春・延世大学教授が就任した。

800

20日、党本部で開かれた自由韓国党の執行部会議=韓国紙セゲイルボ提供

 柳氏は就任後の記者会見で「これまで自由韓国党は理念的にあまりにも左傾化した人が多かった」と述べ、政策見直しの必要性を強調。また国政介入事件をきっかけにした保守没落と関連し「朴前大統領が政治的に失敗したことには同意するが、朴前大統領が実際に犯した過ちよりはるかに激しい政治的報復を受けたのではないかという気もする」とし、政権交代を狙っていた左派陣営が事件を利用した面があるとの認識を示した。

 しかし、同党内部からは委員長ほか委員10人に対し「極右」との批判が上がっている。保守派の中でも憲法的価値の擁護や対北強硬論などを鮮明に打ち出しているため世論受けしないというのが理由だ。

 これについて洪準杓党代表は「極右とは全体主義、純血民族主義、極端な国家主義、妥協のない愛国主義を主張する人たちが自分たちの意思を貫徹するために暴力も厭(いと)わない立場を意味する」として反論したが、非主流派議員を中心に革新委の人選を批判する声が上がっている。

 一方、国政介入事件に伴い自由韓国党を割って出た正しい政党も壁にぶつかっている。執行部は先週、「民心キャッチツアー」と称しその最初のスケジュールとして朴前大統領の地盤である南東部の大邱を訪問したが、保守系団体のメンバーから「裏切者」などとののしられる場面があった。朴正煕元大統領の生家を訪ねた際は抗議が激しく参拝して5分もたたないうちにその場を退散したという。

 同党は国政介入事件を招いた朴前大統領と一線を画し、保守改革の旗印を掲げていた。本来なら朴前大統領弾劾とその後の大統領選敗北を総括し、保守政治再建の求心点になってもおかしくないが、長年にわたって築かれた韓国保守の地盤や組織の前では力不足なのか、自由韓国党に対する劣勢を覆せず、今回のツアーも朴前大統領の支持者に出鼻を挫(くじ)かれた格好だ。

 世論調査機関の韓国ギャラップが21日に発表した各政党別支持率では、与党の共に民主党が46%で圧倒的に高く、次いで自由韓国党11%、正しい政党8%、正義党8%、国民の党5%の順。仮に保守2党が合併したとしても与党とはダブルスコア差以上の劣勢なのに2党とも自党立て直しに汲々(きゅうきゅう)としている状況だ。

 また保守2党が護憲や対北強硬策など保守の伝統的価値観を前面に打ち出しても韓国の世論にあまり響かないという事情もある。特に「40代以下は理念離れし、日々の生活で忙しく、政治に無関心な人が増えている」(韓国紙記者)ためだ。

 文政権発足後、初の全国規模の選挙となるのが来年6月の統一地方選。事実上、政権に対する中間評価となり、保守2党としては政権奪還に向けた2020年の総選挙、22年の大統領選なども視野に形勢挽回を図りたいところだが、再建の道筋は見えていない。