北ミサイル脅威、対決姿勢の真意見極めよ
北朝鮮は「最大の祝日」である故金日成主席生誕の日(太陽節)を迎え、約1年半ぶりとなる軍事パレードを実施した。最高指導者・金正恩朝鮮労働党委員長が観覧する中、7種類の弾道ミサイルが公開された。
国威発揚を図るとともに米国との対決姿勢を鮮明にしたものとみられるが、いたずらに浮足立つのは賢明ではない。北朝鮮指導部が何を狙っているのかその真意の見極めが必要だ。
自滅の道は選ばない
今回特に緊張が高まっているのは、トランプ米政権が北朝鮮への圧力を強めたためだ。米中首脳会談の最中に米国がシリアを攻撃したことが北朝鮮への警告と受け止められたほか、空母カール・ビンソンを韓半島近海に向け派遣したことで、あたかも米国が近いうちに北朝鮮に軍事攻撃を仕掛けるかのごときムードが広がった。
これに対し、北朝鮮は強く反発。正恩氏の側近の一人で、軍事パレードで演説した崔竜海党副委員長は「全面戦争には全面戦争で、核戦争には核攻撃戦で対応する」と威嚇した。また翌日には、失敗に終わった可能性が高いものの、東海岸沿いから日本海に向け弾道ミサイル1発を発射している。
どんなに強硬な姿勢を突き付けられても、それに輪を掛けた強硬路線で自ら緊張をつくり出し、相手が萎縮して譲歩するのを待つのが北朝鮮のやり方だ。
だが重要なのは、周辺国のミサイル迎撃態勢や報復能力が整いつつある現在、北朝鮮が戦争を引き起こしてまで自滅の道を選ぶとは考えにくく、挑発や威嚇は体制維持を大前提にした戦略・戦術の可能性が高いという点だ。国際社会に「核保有国」の地位を認めさせ、米国と対等な立場で協議し経済制裁解除や体制保障を取り付けるのが最終目標とみられている。対決姿勢を強めているのは自分たちに有利な条件で対話に臨むためだ。
北朝鮮がこうした強硬路線を取るのは、外交・安全保障ラインが不安定で政策に一貫性がないとの指摘もあるトランプ政権側にも一因がある。日韓などアジア太平洋4カ国を歴訪中のペンス米副大統領は、北朝鮮の揺さぶりに動じない断固たる姿勢を打ち出す必要があろう。
軍事パレードでは新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と推定されるものや潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、さらにこれを地上配備型に改良した中距離弾道ミサイル「北極星2型」などが登場したが、その様子を伝えた日本の報道に問題はなかっただろうか。
取材で気を付けたいのは、未知の国・北朝鮮に足を踏み入れる高揚感でいそいそと出掛けてしまい、彼らの兵器に圧倒され、その宣伝に終始することだ。表面の動きだけを追えば結果的に緊張を煽(あお)ることになる。
迎撃能力強化も急げ
もちろん、金正恩政権が弾道ミサイルで日本や韓国を攻撃しないとは言い切れない。日本は大気圏外を想定したイージス艦搭載のSM3と大気圏内向けの地上配備型のパトリオット(PAC)3による二段構えをさらに強化する重層的な迎撃システムの構築を急ぎ、北朝鮮の攻撃意思をくじくべきだ。