韓国ミサイル配備、地域安保に不可欠な決断だ


 米韓両政府が北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対抗する地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の在韓米軍配備を正式に発表した。

 韓国のみならず日本をはじめとする北東アジアの安全保障にとって不可欠な決断であり歓迎したい。

 中露両国は露骨に反発

 THAAD配備は日増しに脅威の増大する北朝鮮の核・ミサイルを無力化させることが目的だ。韓国の場合、既存の迎撃システムでは精度や地上の被害防止などの面に難点があり、これらを克服する必要性が早くから指摘されていた。

 北朝鮮でのミサイル発射の兆候を事前に把握し、ここに先制攻撃を加える「キル・チェーン」や韓国独自のミサイル防衛(MD)システムなども予算が配分され推進されているが、実戦配備は2020年以降になる見通しで、安保の空白が懸念されていた。

 米韓は共同声明でTHAAD配備の時期について「迅速に配備されるよう緊密に協議中」と明らかにし、配備先の選定も最終段階にあるという。

 北朝鮮は今年に入り核実験や事実上の長距離弾道ミサイル発射を相次いで行い、先月の中距離弾道ミサイル「ムスダン」発射については一定の性能を確保したとの見方が広まった。一部ではこの発射により大気圏への再突入技術の開発にメドを付けたとの観測も出ている。

 THAADは敵の弾道ミサイルが大気圏内に再突入した段階での迎撃であるため、その意味では北朝鮮の技術改良に対抗した措置と言える。

 政治・外交面でも北朝鮮の強硬路線に歯止めがかからない。5月の第7回党大会では「核保有」を繰り返し強調し、もはや6カ国協議など対話の枠組みだけで北朝鮮から核・ミサイルの放棄を導き出すのは現実的ではなくなった。

 米韓当局間での協議は実際には数年前から始まったとされるが、THAAD配備を決定するまでには紆余曲折もあった。THAAD配備に伴うレーダーが中国の軍事施設までカバーし、米国との核抑止力に基づく軍事バランスが崩れることを理由に中国が反発したためだ。

 朴槿恵政権が韓半島統一を念頭にした中国接近路線を敷き、民間では中国との経済協力が拡大し続けていた。韓国は当初、中国に配慮するかのようにTHAAD配備に慎重な姿勢を崩さず、日米はじめ周辺国に不信や失望を抱かせた。

 最終的には北朝鮮のミサイル脅威が到底看過できない段階に至り配備に踏み切った。中国とロシアは露骨に反発しているが、韓国は安保上必要と判断したのであり、あくまで北朝鮮に対するミサイル防衛だ。両国の顔色をうかがうことはない。

 欠かせない日米韓連携

 北東アジア安保に欠かせないのは日米韓3カ国の連携だ。韓国は先月、ハワイ沖などで実施された日米による対北ミサイル防衛演習に初めて参加した。

 各国のイージス艦が仮想の標的を探知・追跡し、その情報を共有した。今後もこのように3カ国連携を強化していくことが求められる。