北潜水艦ミサイル、改良重ねれば重大な脅威だ
北朝鮮が東部咸鏡南道・新浦付近の日本海から潜水艦発射型の弾道ミサイル(SLBM)1発の発射実験を行った。
北朝鮮は今年に入って核実験や長距離弾道ミサイル発射を強行するとともに昨年5月以降SLBM発射を繰り返している。このまま技術改良を重ねれば周辺国にとって重大な脅威になるのは必至だ。
党大会控え内部結束狙う
北朝鮮の国営メディアは最高指導者・金正恩第1書記が立ち会う中、ミサイルとみられる飛翔体が水中から発射され、そのまま垂直に上昇する様子を捉えた写真を公開した。
いつものことながら発射は「大成功」だったと自画自賛し、金第1書記は「今や南朝鮮傀儡(かいらい)(韓国)と米帝の後頭部にいつでも思い通りに刃を突き刺すことができるようになった」と述べた。だが、韓国軍は通常300㌔とされる射程が約30㌔にとどまり発射は失敗に終わったとの見方を示した。
北朝鮮は来月上旬に36年ぶりとなる労働党大会を控えており、軍事力を内外に誇示する必要があったのだろう。特に内部結束の効果を狙ったという意味で、発射は北朝鮮にとってそれなりのメリットがあった側面もある。
だが、たとえ発射が失敗であり、内部向け効果を狙ったものだとしても決して警戒を緩めてはならない。特に注意を喚起したいのは、北朝鮮の技術水準を日本はじめ周辺国が過小評価するのは禁物という点だ。
これまで北朝鮮が公表してきたSLBM発射の写真をめぐり、過去の短距離ミサイル発射時の写真を合成したものにすぎないと指摘されたことがあった。求められる技術力の高さから、北朝鮮がSLBMを実戦配備するにはなお数年かかるとする見方が少なくない。
しかし、極めて閉鎖的な北朝鮮という国で進められてきた核やミサイルの開発度について、数少ない判断材料から推測するのは危険だ。高位脱北者らによれば、北朝鮮は平気で詐欺まがいの仕打ちをする一方、公言した内容には必ず一定の根拠がある。聞き流せない忠告として受け止めたい。
周知の通りSLBMは相手に発射位置を察知されにくい。偵察衛星が北朝鮮潜水艦の出帰港を常時監視しているとはいえ、水中発射は日米韓3カ国による迎撃体制の間隙(かんげき)を縫う恐れがある。それだけに万全の備えが不可欠だ。
岸田文雄外相は外交ルートで北朝鮮に抗議したことを明らかにし、今後とも北朝鮮の動きに対する警戒と監視に万全を期す考えを示した。党大会に向け5回目の核実験を強行する可能性も排除できない。
日米韓の協力緊密に
一部報道によると、日米韓は今年、北朝鮮のSLBMによる攻撃に備えた訓練を実施し、その一環として日韓は軍事情報共有の訓練も行った。こうした軍事協力は今後さらに緊密にしていかなければならない。
日本としては北朝鮮の挑発には断固たる姿勢で臨む一方、日本人拉致問題の解決の糸口をつかむためにも対話の窓口は閉ざすべきではない。