「セウォル号」沈没事故2年、反政府教材を全国に配布

親北朝鮮の韓国全教組

意図的誘導で生徒の同調狙う

 親北朝鮮の偏向理念を教育現場に持ち込むことで知られる韓国の全国教職員労働組合(全教組)が大型船「セウォル号」沈没事故から2年に合わせ、朴槿恵政権が事故の真相を隠し、責任を取っていないという根拠のない批判に生徒が同調するよう意図的に誘導する教師用教材を全国に配布し物議を醸している。(ソウル・上田勇実)

 「朴槿恵大統領、もっともらしく言い繕うことばかりなさらず、もっと国民に気を使ってください」

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「416教科書」(小学生版)に掲載された怪物に変貌する女王の挿絵。韓国政府の要請で改訂版で挿絵は削除された

 京畿道のM高等学校で実施された沈没事故をテーマにした授業で、ある高校2年生はこうコメントした。使われた教材は「記憶と真実に向けた416教科書」。事故発生の4月16日に合わせ、全教組が「真実を隠蔽(いんぺい)しようとする政権に対抗しわれわれは再び憤怒し抵抗しなければならない」(巻頭言)という思いを込めて作った教師用教材だ。

 授業の様子は4月11日付の全教組機関紙「教育希望」(隔週刊)の紙面で紹介された。生徒たちの所感などから、授業を通じ生徒たちが反政府感情を抱くようになる様子が伝わってくる。

 「416教科書」小学生版の「セウォル号惨事、誰が責任取るべきですか?」の項目には巨大な黒い竜に子供たちがさらわれる童話風の物語が載っている。城に住む女王は子供たちがさらわれた現場にはついに姿を見せず、後になって人々の前に現れ涙を流す。ところが女王の顔は歪(ゆが)んでいき、仮面が剥がれると醜悪な怪物が姿を現す…。

 沈没した船の上で唇に人差し指を立てる不気味な挿絵のすぐ次項には事故を受けた記者会見で涙を流す朴大統領の顔写真がある。まだ判断力が未熟な小学生の目には子供たちを見殺しにした「女王」は朴大統領だと映るに違いない。

 小・中学生版いずれにも尹ミンソク氏が作詞・作曲した「真実は沈没しない」という歌の楽譜がある。尹氏は軍事政権に反対する民主化運動の一環として1980年に起きた光州事件に啓発され、北朝鮮礼賛の歌を数多く作曲した。説明文は「真実が明らかになるのを願って次の歌を覚えましょう」とある。

 「次のうち惨事に対し最も大きい責任は誰にあるか話し合ってみましょう」との問い掛けに、「第一責任主体」として上から「大統領、海洋水産省、海洋警察、清海鎮海運(船会社)、船長と船員たち」と記された表があり、生徒がおのおのについて意見を記す空欄が設けられている。中学生版の中にある記述だ。

 全教組によると、「416教科書」はこれまでに9千部の注文があり、すでに全国の小中高校に配布された。注文したのは「ほとんどが全教組所属の先生たちとみられる」(宋在爀スポークスマン)という。

 このように「416教科書」には巧妙に反政府感情を煽(あお)る「仕掛け」が散りばめられていて、「全教組がセウォル号沈没事故まで政治的目的のための道具に引き込んだという批判は免れがたい」(韓国紙東亜日報)といえよう。

 韓国教育省は「416教科書」が教育現場で使われる事態を問題視している。「国家観、教育的適合性、事実歪曲」(同省)の観点から使用禁止処置を下し、これを守らない場合は処罰する方針を明らかにしたが、全教組は一部修正に応じるだけで逆に反駁(はんばく)の記者会見を開くなど徹底抗戦の構えだ。

 上記のM高校がある京畿道の李在禎教育監(教育行政トップ)は教育省の禁止処置を「学校の自律性を無視する」と批判。李教育監は北朝鮮に融和的だった盧武鉉政権で統一相を務めた人物だ。

 全教組は2年半ほど前、左傾化教育の是正を進める朴政権から「法外労組」を通告され、補助金打ち切りの憂き目に遭い1999年の合法化以来、最大の危機に瀕(ひん)していると言われるが、一方で現政権への敵意をむき出しにし、反政府感情拡散に躍起になっている。

 「セウォル号」沈没事故の原因と責任 韓国最高検察庁が発表した沈没原因は船の無理な増改築、過剰積載、船員による運航上の過失など。また多数の死者を出したことについては船長と船員の責任放棄や誘導ミス、地元海洋警察署の問題ある対応、救助会社選定過程での違法行為などを指摘した。

 事件の刑事責任を問う裁判で光州高裁は、船長に対し未必の故意による殺人罪を認め無期懲役、機関長ら他の船員14人には懲役1年6カ月から12年の判決を言い渡した。被告、検察双方の上告が棄却され刑が確定。

 船会社・清海鎮海運の事実上オーナー、兪炳彦氏の関連企業や宗教団体が家宅捜索されたが、兪氏は変死体で発見された。