北の核実験、座視できぬ対日核脅威の増大
北朝鮮が4回目の核実験を実施した。同国政府は「初の水爆実験」としているが、核実験に成功したことだけは間違いない。隣接国であり、かつ常識では考えられないような無法行為を継続してきた北朝鮮だけに、わが国にとっては脅威が増大したと言える。
「初の水爆成功」と発表
北朝鮮は2003年に核拡散防止条約(NPT)の脱退を宣言し、核実験を継続してきた。当初はプルトニウム原爆開発だったが、最近はウラン原爆に力を入れているとの情報も流れている。今回の実験が水爆か普通の原爆か、真偽のほどは不明だが、水爆の可能性はある。
第一に、水爆を爆発させるには、核融合に必要な高熱を生み出すためウランを核分裂させることが欠かせない。因みに、北朝鮮北部には優れた品質のウランが埋蔵している。
第二に、旧ソ連、英国、フランス、中国など後発核武装国の核兵器開発の歴史を振り返ると、原爆装備から水爆実験成功までのインターバルは段々短縮化されている。
第三に、北朝鮮の有能な若者が、米国をはじめとする欧米諸国で高度の技術教育を受けている。これは原子物理学の分野だけでなく、ロケット技術分野でも同様である。北朝鮮では有能な若者は特別待遇で天才教育を受けており、彼らの能力を軽視すべきでない。
ただ仮に水爆実験に成功したとしても、それは“爆発装置”であり、兵器ではない。当面は恐れることはない。ところが、原爆は既に「爆発装置」から「兵器」になりつつあることを忘れてはならない。
欧米の研究機関は、北朝鮮が既に40発前後の核弾頭を保有していると見ている。その上、現在建設中の寧辺の原子炉が完成すれば、北朝鮮は年間4発分のプルトニウム製造能力を持つようになる。核爆弾投射用のミサイルも、対日向けは中距離弾道弾「ムスダン」がある。命中精度は低いので戦略目標には使用できないが、対都市攻撃用としては十分に威力を発揮する。
わが国では中国が北朝鮮の核保有をやめさせてくれるとの期待が強い。だが北朝鮮は、冷戦下で旧ソ連と中国の対立をうまく利用して、軍事、経済援助をせしめてきた。
冷戦後も決して中国一辺倒ではない。北朝鮮崩壊に伴って鴨緑江の南に星条旗が翻ることを恐れる中国の心情を利用して巧妙に立ち回っている。世界の核武装国の中で唯一核戦力を増大している中国が、北朝鮮に核武装をやめろとは言いにくい面もある。
「全廃」論は通用しない
このように見てくると、今回の実験を金正恩第1書記の誕生日や36年ぶりの朝鮮労働党の党大会開催の奉祝花火視することはできない。今回の実験は、ロシア同様、オバマ米大統領の国際社会での指導能力の低さを見越してのことでもある。
米国の同盟国に差し掛ける「核の傘(拡大抑止力)」は低下しつつある現実を直視すべきだ。「世界唯一の被爆国」「核兵器全廃」「非核三原則」などを呪文のように唱えていれば済む時代は去ったのである。
(1月7日付社説)