政権交代か継続か あす韓国大統領選
尹氏「左翼理念の退場を」
李氏「行政手腕を国政で」
文在寅大統領の任期満了に伴う韓国大統領選挙が明日実施される。選挙は政権交代を訴える保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦候補と自身の行政手腕をアピールする与党「共に民主党」の李在明候補による事実上の一騎打ち。選挙結果は日韓関係や混迷を深める北東アジア情勢にも少なからぬ影響を与えそうだ。
(ソウル・上田勇実、写真も)
コロナ大流行中の投票
「節度を超えた学生運動の理念に執着するあまり、政界の周辺を何十年も行き来し、癒着した業者と一緒に利益をむさぼる連中が政権を握ってきた。だから科学的防疫(の欠如)も反米路線も気にしないのだ」
尹氏は6日、ソウル市内での遊説でこう述べ、失政が続いた現政権の基本路線を踏襲する李氏を批判した。李氏が選挙期間中に急きょ訴え始めた「政治改革」については「左翼理念の連中がわが国政界から風呂敷を包んで家に帰るのが本当の政治改革」(5日、京畿道驪州市での遊説)と指摘した。
遊説現場にいた70代男性は「私は30年以上軍人として働いてきたが、尹候補にはこの国の崩壊した安保を正常に戻してもらいたい」と述べた。
一方、李氏は5日、出身地であり、かつ政界入りの出発点ともなった京畿道城南市を訪れ、次のように訴えた。
「私が城南市長になると生活改善を実感された市民の皆さんから『次は京畿道知事をやらせてみよう』と言われて知事になり、道民の皆さんからも所得政策や環境美化などで評価していただいた。だからこそ『次は大統領をやらせてみようか』ということになったのではないか」
検事生活一筋で、行政手腕が未知数の尹氏とは違う「有能」な自分こそ次期大統領に相応(ふさわ)しいというわけだ。
遊説現場に駆け付けた同市在住の40代女性は「李候補は市長時代、市民に何が必要なのかを把握し、それを実行に移してくれた」と述べた。
今回の選挙は政権交代か継続かが最大の争点。政権交代を望む世論は過半数を超えている。各種世論調査で尹氏と李氏の支持率はほぼ拮抗(きっこう)していたが、尹氏は3日、同じく政権交代を強く訴えていた中道系野党「国民の党」の安哲秀候補との一本化を劇的に実現させた。ただ、安氏支持票は尹氏に集中せず分散する傾向がみられ、その効果は限定的との見方も少なくない。
投票はオミクロン株が大流行する真っただ中で行われる。7日零時に発表された新規感染者数(1日当たり)は21万人を超え、ここ1週間の人口当たり平均感染者数は世界で最も多い。こうしたリスクを考慮してか、4日と5日の2日間にわたって実施された期日前投票は過去最高の投票率36・9%を記録。感染して投票場に行きづらくなる前に一票を投じようという意思の表れとみられる。
期日前投票では、感染者・隔離者が別途に投票した際、規定の投票箱がなく係員が回収したり、配られた投票用紙にすでに特定候補への投票印が押されていたことなどが発覚し、波紋が広がっている。尹氏、李氏の得票が僅差である場合、負けた方から不正投票疑惑が提起される可能性がある。
現在、中央選挙管理委員会の在職委員7人のうち6人が親与党派とされ、特に委員長は偏向的な左翼理念で知られる「ウリ法研究会」の出身。公正選挙に責任を負うはずの選管委が「どうしたら与党有利になるかばかりを考えてきた」(韓国メディア)という実態が選挙に影を落としている。