福島処理水放出で韓国・文政権、「汚染水」と決めつけ非難
「反日」利用し脱原発正当化か
東京電力福島第1原子力発電所の処理水を海洋に放出する決定に韓国が強く反発している問題で、文在寅政権が国内の反日感情を利用して放出反対の世論を広め、脱原発政策を正当化しようとしているとの見方が浮上している。韓国にも処理水の安全性を認める専門家はいるが、「土着倭寇」(=韓国人親日派)のレッテルを貼られることを恐れ、声を上げられずにいるという。(ソウル・上田勇実)
国内環境団体に借りも
韓国政府は処理水放出を「絶対受け入れられない」とし、文大統領自身も放出差し止めの暫定措置を含め、この問題の国際海洋法裁判所への提訴を検討するよう指示した。新任大使から信任状を受け取る場では相星孝一駐韓大使に懸念の意を伝えたという。
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韓国政府は「反対の輪」を国際社会にも広げようとしている。鄭義溶外相はバイデン米政権で気候変動を担当するケリー特使と会談し、同問題について深刻な憂慮を伝え、協力を求めた。韓国外交部は自国主導で中米8カ国が放出に懸念を表明する共同声明を出したと発表した。
ただ、鄭外相はケリー特使が自身の発言に同調しないと、今度は韓国国会で「IAEA(国際原子力機関)の基準に適合する手続きに従うなら敢えて反対しない」と態度を一転。その後、国内から「右往左往している」(韓国メディア)などと批判されると、「唯一、米国だけが(放出に)肯定的な反応だった」と負け惜しみのような発言までした。
処理水が、韓国が主張するような「危険な汚染水」でないことは既にIAEAをはじめ国際社会で科学的に立証済み。野党議員が入手した資料では、韓国政府自身が昨年10月に処理水放出に伴う放射性物質について「数年後に国内海域に到達しても移動中の拡散、希釈で有意味な影響はない」とする報告書を作成していた事実も明るみになった。
韓国政府は放出による人体や環境への影響は心配ないことを承知の上で、放出に反対している可能性がある。その理由についてある元韓国政府高官は自身のユーチューブチャンネルでこう指摘する。
「文大統領は放出問題を原発の危険性をクローズアップさせることで自身が推進する脱原発政策の正当性を宣伝し、退任後の政治的、法的責任を希釈させるための格好の材料と見なしたようだ」
文氏は大統領に就任して早々、それまで国策だった原発を見直し、脱原発政策への転換を宣言。稼働中原発の一部廃炉や準備中だった新規原発の建設計画を白紙に戻す方針を明らかにしてきた。「思想的に環境至上主義者であり、大統領選当選時に国内環境団体から強力な支援を受けた」(同高官)ことが脱原発に固執する理由だという。
処理水を「汚染水」と決めつけて非難し、原発への拒否感を世論に植え付けることで、国内で進める脱原発政策の正当性を担保できるというわけだ。
また脱原発の一環として南東部の月城原発1号機を早期閉鎖するために作成された政府報告書をめぐり、文政権の意向を受けて経済性が過小評価され、その証拠まで隠滅させた疑いが浮上し、検察が捜査を開始。この問題で文氏は「退任後に法的責任を問われる可能性がある」(同高官)ため、福島「汚染水」で世論の目をそらそうという思惑も絡んでいるという。
2008年、米国産牛肉輸入再開に反対して左翼運動家たちがたきつけた狂牛病騒ぎで見られたように、ただでさえ韓国は科学的根拠より感情論に押し流されやすいお国柄。その上、社会的抹殺を恐れて誰も声高に反対を唱えられない「反日」を利用できるのが今回の処理水放出だ。
文氏の手によって日韓関係の火種がまた一つ増えようとしている。