北朝鮮 正恩氏護衛で新組織
身辺不安で疑心暗鬼か
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、今年7月までに自身を護衛させる新しい3組織を立ち上げていたことが分かった。韓国公安筋が10日、本紙に明らかにした。国際社会による経済制裁の長期化や新型コロナウイルスの感染防止に向けた国境封鎖などで経済が悪化し、国内の不満が高まる中、正恩氏が身辺安全に強い不安を抱き、護衛組織に対し疑心暗鬼になっていることを反映したものとみられる。
新たな3組織は朝鮮労働党中央委員会護衛隊、国務委員会警衛局、最高司令部護衛局。すでにこれらの存在と名称は明らかになっていたが、主要任務が正恩氏護衛にあることは判明していなかった。
正恩氏は今年7月26日、平壌の党中央本部で行われた「白頭山記念拳銃授与式」に出席し、31人の北朝鮮軍指揮官一人一人に自身の名前が刻まれた新型拳銃を手渡した。このうちの3人がヒョン・スンチョル党中央委護衛隊長(北朝鮮軍の階級で上将)、キム・チョルギュ国務委警衛局長(同上将)、キム・ヨンホ最高司令部護衛局長(同中将)の3組織のトップだった。拳銃授与は「正恩氏の核心的な親衛隊メンバーである証」(同筋)とされる。
これまで北朝鮮の最高指導者を護衛してきたのは国家保衛省、社会安全省、護衛司令部、朝鮮人民軍保衛局など。複数の新組織を立ち上げたのはこれら既存組織を含めて互いに牽制(けんせい)・監視させることで、クーデターなどの暴走を構造的に防ぐのが狙いとみられる。
韓国の情報機関、国家情報院は先月27日、国会情報委員会で「正恩氏が(防疫で)非合理的な対応をしている」と報告。直接報告を受けた国情院出身で与党、共に民主党の金炳基議員は「経済難やコロナ禍によるストレスのせいではないか」と述べ、正恩氏が精神的に追い込まれている可能性を示唆した。
(ソウル 上田勇実)