泥沼化する韓国慰安婦運動
揺らぐ対日正当性
いわゆる元従軍慰安婦問題をめぐる自称被害女性と元支援団体トップによる暴露合戦が波紋を広げている。これと関連し韓国メディアは団体トップに関わる数々の不正疑惑を報じ、被害女性についても発言の信憑(しんぴょう)性に改めて疑問が投げ掛けられるなど、事態は泥沼化している。文在寅政権はまず最初に慰安婦問題で日韓関係を悪化させたが、韓国側の正当性が揺らぐ可能性もでてきた。
(ソウル・上田勇実)
元団体トップに不正疑惑
被害女性発言も「眉唾」か
事の発端は今月7日、元慰安婦として30年近く日本政府批判などを繰り返してきた李容洙さんが南東部・大邱で記者会見を開き、支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(=正義連、旧挺身隊問題対策協議会=挺対協)」の元トップである尹美香氏を公然と批判し始めたこと。
李さんは「私は(尹氏に)騙されるだけ騙され、利用されるだけ利用された」「(日本大使館前で慰安婦問題解決を促す)水曜デモをなくすべき。(参加する)学生の心の傷が大きい。日本と韓国の若者が往来して親しくすべき」などと語り、韓国メディアが一斉にこれを伝えた。李さんは正義連の募金が流用されているとも主張した。
これに対し尹氏は翌日、自身のフェイスブックで「正義連の活動と会計は徹底して管理し、監査を受け、報告している」とし、水曜デモの「平和、人権教育」における意義を強調。その一方で「1992年に(李さんから慰安婦の)申し込みの電話を受けた時、(李さんは)私は被害者ではなく友人が…と言っていたのを昨日のように覚えている」とし、李さん自身は元慰安婦ではないことを示唆した。
その後、保守系で最大手の朝鮮日報を中心に尹氏や正義連をめぐる不正疑惑報道が相次いでいる。「元慰安婦のため購入されたはずの豪邸を尹氏の父親に管理させ、給与まで上げた」「尹氏の娘の米国留学費用は高額なのに、その出所が不透明」「元慰安婦が設立した奨学金が日本の朝鮮学校ではなく韓国の親北団体幹部の子供に使われた」「正義連に対する国の助成金が文政権で46倍に膨れ上がり、一部の使途が不明」等々。尹氏や正義連が団体の資金や所有物を横領、流用、私物化した疑いが大半だ。
一方、李さんの発言にも「慰安婦問題で覚醒したわけではなく、尹氏や正義連とトラブルがあった」「一部は眉唾もの」とする見方が上がっている。
保守系市民団体のメンバーは15日、日本大使館前に設置された慰安婦像の近くで記者会見を行い、これまで20回に及ぶ李さんの証言内容が何度も変わってきた点に触れながら「尹氏の詐欺と横領に関する犯罪を罰すると同時に常習的な嘘(うそ)つきの李容洙の正体も明らかにすべき」と訴えた。
李さんは3年前、訪韓したトランプ米大統領に青瓦台(大統領府)で抱き付くなど破天荒な言動でも知られる。
両者の葛藤を受け、与野党も真っ向から対立している。
最大野党の未来統合党は「尹氏は(日韓慰安婦合意に基づく)1億ウォン支給で元慰安婦たちに受け取らないよう促したというが、被害者中心主義だと言っていた尹氏のダブルスタンダードな態度と嘘、自分の栄達のため慰安婦たちの苦痛を利用した疑いが持ち上がるほかない」と尹氏を批判した。
これに対し与党の共に民主党は「親日勢力の最後の攻勢」などと反発。支持者たちも「正義連を攻撃する者は土着倭寇(韓国の親日派の意)だ」と言い放った。
尹氏と李さんは30年近くも同じ運動の中心にいたパートナー。李さんがなぜ尹氏に反旗を翻したかは諸説紛々だ。尹氏が先月の総選挙で与党系の比例代表政党から出馬し当選したことも関係していると言われるが、一連の疑惑報道で与党党員から議員辞退を求める声も上がっている。
いずれにしろ二人の「カネと権力をめぐる醜い争い」(保守団体)で、韓国では聖域だったはずの慰安婦問題に傷が付いたのは確か。道徳的優越感を背に日本の“非”を追及し続けてきた韓国の慰安婦支援運動も、今回の騒動でその正当性が揺らぐかもしれない。







