FCA、ルノーとの統合案撤回


世界首位メーカー誕生ならず

 欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、仏ルノーに提案していた経営統合案について、5日夜(日本時間6日未明)の協議でルノーが決定を保留した直後に統合の提案を撤回した。仏経済紙レゼコーは、ルノー側の保留は提携関係にある日産自動車との検証が不十分な上、政治環境が整っていないことが判断理由だったとしている。

仏政府要求に難色か

 FCAが提案した総額350億㌦規模の統合が実現すれば、世界第3位の自動車メーカーが誕生することになり、日産、三菱自動車が加われば世界の総販売台数は年間1500万台を超え、世界首位の連合体となるはずだった。

ルノーとFCAのロゴ

ルノーとFCAのロゴ(AFP時事)

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はFCA関係者への取材で、「提案が理にかなっているとの考えは変わっていない」「そうした統合が首尾よく進むような政治的環境が、今のフランスには存在しないことがはっきりした」と述べたことを紹介している。

 今回の統合提案は基本的に両社が対等な関係での統合を目指していた。その一方で、ルノーの15%の株を所有する筆頭株主の仏政府の存在は大きく、仏政府から取締役1人を派遣することや、合併による工場閉鎖や人員削減はしないことなどの譲歩案がFCA側から出されていたと伝えられる。

 WSJによれば、5日夜に開かれた取締役会の協議で仏政府側は「統合承認の第一の条件として、ルノーと日産の提携の枠組みに適合することを挙げた」としている。実際、ルメール経済・財務相は5日、経営統合について「日本のパートナーを排除しないことが条件だ。日産が統合に賛同しなければならない」との認識を示していた。

 関係者の話では、仏政府はFCAがルノーに持ち掛けた提案について、日産側は積極的関与を避けていたため、統合が実現した場合、日産がルノーとの提携を解消するリスクを恐れていたとされる。また、FCA側の狙いの一つが電気自動車(EV)関連の莫大(ばくだい)な開発コストや日産の持つEVの先進技術も視野にあったことにルノー側の懸念があったという。

 日産の西川広人社長は3日、統合が実現すればルノーの会社形態が大きく変わるとの見方を示し、「これまでの日産とルノーの関係の在り方を基本的に見直していく必要がある」と述べていた。この発言も日産との経営統合を目指すフランス政府およびルノーにとって懸念材料だった。

(パリ 安倍雅信)