ゴーン会長逮捕、仏ルノー経営体制刷刷新へ
混乱回避へ検討
日産自動車と資本提携関係にあるフランスの自動車メーカー大手ルノーは、最高経営責任者(CEO)兼会長のカルロス・ゴーン会長が日本で逮捕されたことを受け、トップ不在による混乱を避けるため、経営体制刷新の検討に入った。一方、同社労組は同件への怒りを表明、雇用環境の悪化への懸念からフランス国内のルノーの利益を守るよう求めた。
ゴーン会長が逮捕された19日、ルノーは「取締役会を可能な限り早い時期に開く」との短い声明を出した。同日、ルノーの15%の株を所有するフランス政府は、マクロン大統領が「心配はしていない。成り行きを見守りながら、3社連合の安定のために全力で取り組む」と冷静さを示した。
ルノー経営陣周辺では、ゴーン会長から直接、今回の容疑に対する明確な説明を待ちつつも、企業利益を第一に考える立場を明らかにしている。日産でのゴーン氏の会長解任が決まれば、ルノーも同氏のトップの地位を維持することは困難との考えが有力なため、後任はティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)を中心に検討が進められていると複数の仏メディアが報じている。
ボレロ氏は、今年2月にチーフ・コンペティティブ・オフィサーからCOOに昇格した人物で、事実上のナンバー2とされる。仏メディアは専門家の話として、ゴーン会長の後任選びが、今後の3社連合の命運を決めるという点では一致している。仏自動車産業研究所のフラヴィアン・ヌーヴィ所長は「ルノーの安定確保が優先課題。ゴーン会長から3社連合の経営統合戦略を受け継げるリーダーを見いだすことが鍵を握る」と指摘している。
また、ルノーのトップに立つ人物は、15%の株を所有する政府のマクロン氏との関係構築も不可欠。マクロン氏は3社連合をフランス企業に引き込みたい考えを示したことも経緯もあり、日産には強い警戒感がある。労使関係の厳しいフランスでは、政府の支援も欠かせない。トップはゴーン会長が築いてきた大統領との人間関係も引き継ぐことになる。
(パリ安倍雅信)