EU ベラルーシを空の孤立へ


強制着陸 反体制派拘束で制裁合意

ベラルーシ空軍が23日、ギリシャからリトアニアに向かっていたアイルランドの航空会社ライアンエアーの航空機を同国のミンスクに強制着陸させ、搭乗していた反体制派のジャーナリストの身柄を拘束した問題で、欧州連合(EU)は24日、EU領空からベラルーシの航空会社を締め出す制裁措置を決定した。ブリュッセルでの緊急会合でEUの全27加盟国首脳は、EUの航空会社もベラルーシ上空を飛行しないよう勧告し、さらなる経済制裁を科すことで合意した。

24日、ブリュッセルで、記者会見する欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長(EPA時事)

24日、ブリュッセルで、記者会見する欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長(EPA時事)

 ミンスクで身柄を拘束されたのは、旧ソ連・ベラルーシのルカシェンコ政権に反対するジャーナリスト、ロマン・プロタセビッチ氏(26)で、ライアンエアー航空機に搭乗中、ベラルーシ空軍が同機に爆弾が仕掛けられている可能性があるとして、ミンスクに誘導し、強制着陸させた。狙いはジャーナリストの身柄を拘束する目的だったことが分かり、今もプロタセビッチ氏の行方は分かっていない。

 英国やリトアニアは24日、自国内の航空会社に対し、ベラルーシ上空の飛行回避を指示し、ウクライナはベラルーシとの直行便停止を表明した。北欧のスカンジナビア航空や、ラトビアが拠点のエアバルティック、ドイツのルフトハンザ航空もベラルーシ上空通過をやめると発表し、英独伊など欧州各国政府が、自国駐在のベラルーシ大使を呼び出す動きも相次いだ。

 バイデン米大統領は、ベラルーシ当局の行動を「法外な」ものとして批判し、「政治的異議と報道の自由の両方に対する恥ずべき攻撃だ」と述べた。プロタセビッチ氏の父親は、息子が拷問されるのではないかと恐れているとメディアに語った。さらに「EUを含む国際社会全体が当局に前例のない圧力をかけることを願っている」と訴えた。

 EU首脳会議での合意により、EUの主要航空会社は、ベラルーシ領空を飛ぶルートの変更をすでに開始し、同時に英国やEU加盟国はベラルーシ国営航空会社ベラビアの営業許可を一時停止。欧州とベラルーシ間の空の便が事実上排除され、EUは同制裁措置でベラルーシを孤立させる構えだ。

 欧州の複数のメディアは、ベラルーシはヨーロッパで唯一死刑を行っている国で、プロタセビッチ氏が死刑に直面することを恐れていたと、旅客機に同乗していた乗客が証言している。ベラルーシ側は、あくまでパレスチナのイスラム根本主義組織ハマスによる爆弾テロに対応したと主張しているが、ハマス側はいかなる関与も否定している。

 ルカシェンコ大統領を含む数十人のベラルーシ当局者は、すでにEUから旅行禁止や資産凍結などの制裁を科されているが、EUは今後、さらなる経済制裁も検討するとしている。ルカシェンコ大統領は昨年8月の大統領選挙で不正抗議デモが起きる中で勝利宣言して以来、多くの野党の指導者を逮捕し、何人かの野党政治家は亡命している。

(パリ・安倍雅信)