英アストラゼネカ製ワクチン、EU主要国で使用中断
欧州連合(EU)加盟国ではデンマークなどに続き、フランス、ドイツ、イタリア、スペインなどが15日、英製薬大手アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの接種を一時的に見合わせると発表した。アストラゼネカから提供されたデータでワクチンを接種した英国・EUの約1700万人の中で、37件の血栓症の報告があったことを受けての措置だ。
EU加盟各国はEUの欧州医薬品庁(EMA)が最終判断を出すのを前に、安全性確保のため中断を決めた。アストラゼネカは、血栓症に関しては通常以下の発症レベルで安全性に問題はないと反論している。世界保健機関(WHO)も「現状では接種を続けることを勧める」との考えを表明した。
フランスのマクロン大統領は「EMAが継続を認めれば、なるべく早く接種を再開したい」と述べた。また、ドイツではアストラゼネカ製ワクチンを約160万回接種した後、血栓の可能性がある例が7件報告されたとしており、シュパーン保健相は「ワクチンの承認に影響するのかはEMAが決定する」と述べた。先週末に1件の血栓症例が確認されたスペイン政府は15日、国内で少なくとも2週間、使用を停止することを決めた。
EU主要国が予防措置としてアストラゼネカ製ワクチン接種を中断した背景には、デンマークやノルウェー、アイスランドなどが予防的に接種を中断したことも影響している。EMAは15日、「ワクチン接種者の血栓の症例数は一般に見られるより少ない」との見解を示したが、18日の緊急会合で対応を協議する予定だ。
アストラゼネカ社は、37の血栓の報告について、想定レベルを下回っており、ワクチンが血栓を引き起こす理由についての明確な生物学的説明はないとしている。WHOも関連性の証拠はないと表明した。欧州はワクチン接種が遅れており、中断は各国政府にとって苦渋の決断といえる。
ただ、アストラゼネカ製ワクチンは比較的安価な上に、通常の冷蔵庫で保管できるため中断が与えるダメージはほとんどない。フランスでは薬局でワクチン接種を行っており、接種予定者に対して、延期を通達した。
(パリ安倍雅信)