ウィーンでテロ、4人犠牲 17人重軽傷


 オーストリアの首都ウィーン市1区で2日午後8時(日本時間3日午前4時)、イスラム過激派による銃撃テロ事件が発生し、4人の市民(男性2人、女性2人)が死亡、警官1人を含む17人が重軽傷を負った。容疑者は警官に射殺された。クルツ政権は3日、銃撃テロ事件の犠牲者のために3日間の国家追悼をすることをを決めた。

2日、ウィーン中心部で、身体検査を行う警官たちと、上方からの銃撃を警戒する警官(AFP時事)

2日、ウィーン中心部で、身体検査を行う警官たちと、上方からの銃撃を警戒する警官(AFP時事)

 射殺されたテロリストは、北マケドニア出身で20歳の男、過激派組織「イスラム国」(IS)支持者だった。2019年4月25日、シリアでISと合流しようとしたため反テロ法違反で1年10月の有罪判決を受けたが、年齢が若い理由もあって同年12月5日に早期釈放されていた。

 ネハンマー内相は3日午前6時、緊急記者会見を開き、「容疑者はイスラム過激派のISの支持者だ」と指摘、「わが国の民主主義を弱め、破壊しようとした」と強調した。射殺された容疑者のほか、共犯者が市内に潜伏している可能性が排除できないとして、市民に「不要不急の場合、自宅にとどまってほしい。市内中心街には近づかないように」と警告を発した。学校は同日、休校となった。

 事件直後、同容疑者の自宅捜査が行われ、多数のビデオや資料、武器が押収された。その他、15カ所で家宅捜査が行われた。イスラム過激派テロ事件として捜査が始まっているが、犯行が単独か共犯者がいるかは3日午前6時段階では不明だ。

 事件発生当初、市内1区のユダヤ関連施設があるシュウェーデン広場近くで起きたこともあって、反ユダヤ主義を標榜(ひょうぼう)するテロ事件と受け取られた。ただし、オーストリアのユダヤ文化協会のドイチェ会長は2日夜の国営放送とのインタビューで、「銃撃事件が起きた時にはユダヤ関連施設は閉鎖されており、負傷者が出たとは聞いていない」と述べている。

 オーストリアのメディアによれば、市内6カ所で銃撃が聞こえ、爆弾が破裂した音が聞こえたという情報が流れたが、未確認だ。事件発生後、警官隊、対テロ特殊部隊「コブラ」などが総動員され、連邦軍からも75人の兵士が派遣された。市内上空はヘリコプターが旋回し、現場周辺の動きを監視した。

 オーストリアでは3日午前0時から新型コロナウイルス感染防止のため第2のロックダウン(都市封鎖)が始まった。夜間外出禁止が施行され、レストランや喫茶店が閉鎖されるため、ウィーン市1区では事件のあった2日夜、晩秋の穏やかな気温もあって多くの市民が夕食などを楽しむため外出していた。

 ウィーンのテロ専門家は「銃撃テロ事件は突発的なテロ事件ではなく、緊密に計画されたものだ。容疑者が重武装(短銃、アサルトライフル)していたことから、事件の背後にはテロ・ネットワークが存在するはずだ」とみている。なお、射殺された容疑者が体に着けていた爆弾ベルトはダミーだった。

(ウィーン3 日小川敏)