コーヒーショップ全盛時代ータイから


地球だより

 バンコクのコーヒーショップは日本とさほど変わらなくなった。とりわけここ数年の成長ぶりは、特筆すべきものがある。

 サラリーマンだったタイ人のI氏は、独立してコーヒー豆の輸入業者になり、今ではドイツ車を乗り回すほど羽振りがいい。オフィスビル街を歩くと、スターバックスのコーヒー片手に出社するのも日常的な光景となった。

 90年代のバンコクは、ネスカフェのインスタントコーヒー屋台が1杯5バーツだった。当時のレートで20円程度だ。それが今のスターバックスのコーヒーとなると、日本の値段とほぼ同じで、隔世の感がある。

 それもタイ人がブラックで飲むなんて、昔は考えられなかった。その頃の5バーツの屋台コーヒーは、決まって3分の1ほど甘ったるいコンデンスミルクが入ったガラスコップの中に注がれていたものだ。当時のワーカーは建築労働など肉体を酷使するブルーワーカーが多く、糖分補給を体が欲していた。今日では冷房がガンガン効いたオフィスで働くホワイトワーカーが増え、健康志向も相まって糖分を控えたコーヒーとなっているのだ。

 それでもバンコクらしいと思うのは、挽(ひ)いたコーヒー豆を昆虫採取アミを小さくしたような布製フィルターでドリップするコーヒー屋台があることだ。こちらは1杯30バーツ(約100円)と専門店に比べると格安で飲むことができる。

(I)