日仏2プラス2開催、対中政策で一層の連携を
日仏両政府はパリで初の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を開催し、防衛装備品の共同開発や輸出の管理について話し合う二つの委員会を設けることで合意した。
共同発表では「公海および排他的経済水域(EEZ)での上空飛行の自由や民間航空の安全確保の重要性」を強調した。名指しはしないものの、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定するなど挑発的態度を取っている中国を牽制(けんせい)したものだ。
民生品輸出への懸念も
今回の2プラス2で、軍事転用が可能な民生品の輸出管理について話し合われたことは注目される。昨年3月に仏企業がヘリコプター着艦装置を中国に売却したが、尖閣周辺で領海侵犯を繰り返す中国公船に装備される懸念が高まっていた。
1989年の天安門事件以来、欧州連合(EU)は中国への武器輸出を禁じている。だが、民生品への輸出規制は行われていない。
日仏両政府は今回、軍事転用可能な民生品の輸出について情報共有の体制強化を図ることで一致した。これによって対中輸出に歯止めが掛かることを期待したい。
安倍政権は昨年末に策定した外交・安全保障の基本方針となる国家安全保障戦略(NSS)で、武器輸出三原則に代わる新たな原則を定める方針を打ち出した。英国とは化学防護服の性能検査の共同開発で合意。トルコとの間では、戦車用エンジン開発を検討中だ。
フランスとは開発対象の選定に入る。共同開発によって、わが国の防衛装備品の調達コストを下げる効果も引き出せよう。
わが国の防衛政策の基本は日米安保体制の強化だが、フランスをはじめ欧州諸国との協力も忘れてはならない。欧州諸国は中国から離れているため、その軍事的台頭への警戒感が日本ほど強くない。
しかし、だからと言って欧州諸国が対中武器禁輸を解除すれば、中国の軍事力を向上させることになる。
日本は今回の2プラス2で、軍事転用可能な民生品の輸出について事前通報する制度の導入を目指したが、合意には至らなかった。
2003年から05年にかけ、フランスには禁輸解除の動きもあった。米国の協力もあり、日本はフランスを説得して、今日まで解除を押しとどめてきた。この努力は引き続き必要だ。
もっとも、中国の海洋進出はフランスにとっても国益に関わる問題だ。ニューカレドニアや仏領ポリネシアを抱えるフランスのEEZは世界第2位。このうち太平洋が3分の2を占めている。
日本は対中政策でフランスと連携する上で、こうした点も念頭に置くべきだ。
共同歩調アピールを
今回の日仏合意は、わが国が欧州の大国と連携し中国に責任ある行動と国際ルールの順守を促したものである。
安倍晋三首相は5月にフランスを訪問するが、対中政策での共同歩調をアピールする好機だ。両国関係の一層の深化が求められる。
(1月14日付け社説)