成人の日、「夢」は国と世界へ繋がる


 きょうは成人の日。総務省のまとめによると今年、新成人となるのは121万人。過去最少を更新するが、貴重なそして頼もしい日本の若い力だ。

 元気が戻った日本社会

 新成人たちは、バブル経済崩壊後の「失われた10年」あるいは「失われた20年」と呼ばれる時期の日本社会を見て育った。経済の不振、少子高齢化による様々なひずみが表面化するなど、沈滞ムードが漂う中で過ごしてきたと言える。

 しかし、こうした社会の混乱や停滞を垣間見たことは決してマイナスばかりではない。ようやく経済が立ち直りつつある時にリーマン・ショックによる米国発の金融危機が襲うなど、世の中は必ずしも自分たちが思った通りにはならないことを、間接的にだが、あらかじめ学習できたのではないか。そういう意味では大人と言える。

 そして、2011年の東日本大震災が起きた。被災者はもちろん多くの日本人が、その時様々なことを感じ、考えさせられた。自然の猛威、家族や人と人の絆、そして人生の意味、本当の幸福など。多感な時期にこのような体験をしたことは、人間形成や人生観に大きな影響を与えたに違いない。

 こういう困難を目の当たりにした新成人だが、昨年は2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まった。それを機に日本社会のムードが大きく変わり、再び夢と元気が戻ってきた。これは、見事な天の配剤ではないだろうか。

 日本において景気の停滞以上に問題だったのは、日本人が自信を失ったことである。実力は決して失われたわけでもないのに、メディアその他の影響もあって自身を過小評価してきた。東京五輪の開催決定は、その根拠の薄い思い込みから日本人を解き放ちつつある。

 中国その他新興国の台頭は確かに著しいが、日本全体の力、特に技術力、文化力などのソフト・パワーはこれまで以上に発揮される可能性を秘めている。それはアートやスポーツをはじめとした分野で、新しい発想を持って世界的に活躍する若い人たちがどんどん出てきていることにも表れている。

 グローバル化の波に呑み込まれるのでなく、自ら新しいものを生み出す力を日本の若い世代は持っている。それは日本が社会の安定と高い教育レベルを維持し、希(まれ)に見るほど世界に開かれていると同時に、伝統文化の蓄積があるためである。

 一人ひとりが「夢」の実現に向け邁進(まいしん)してほしい。また、その夢が日本を元気にし、ひいては世界に繋(つな)がることを忘れないでもらいたい。民族・宗教対立、環境問題、南北格差など世界が抱える難問を解決する上で、日本の「和」の精神がますます重要になってきているからだ。

 自信を持って羽ばたこう

 内向き志向が強いとされる今の若い世代だが、本場欧州のサッカーリーグや米大リーグに挑戦し活躍するアスリートと同じように、自信と実力を身に付けて世界に羽ばたいてほしい。たとえ海外へ出て行かなくても、グローバル化された今は、常に世界と繋がっているという自覚を持って頑張ってもらいたい。

(1月13日付社説)