英米の介在を非難する中国
「雨傘革命」下の香港 揺れる一国二制度の行方(2)
中国の習近平国家主席は9日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席した香港の梁振英行政長官と北京で会談し、「中央政府は今後も一国二制度と香港基本法を貫徹させる。法に基づく民主的な発展推進を強く支持する」と述べ、中国側の決定撤回や修正には断固応じず、占拠デモへの妥協を拒む方針を示した。
11日、香港政府と占拠デモを主導する香港大学生連合会(学連)の対話が事実上、打ち切られる一方、学連は全国人民代表大会(全人代=国会)の香港代表らに北京高官との対話の仲介を要求し、さらなる対話の糸口を探っている。
香港の親中派団体「愛港之声」によると、中央政府から香港政府への指示は「流血させるな」「屈するな」であり、事態は持久戦に突入している。会談では習主席からは恒例の行政長官支持発言はなく、支持率23%にレームダック(死に体)化する梁振英行政長官が任期5年を全うできるか様々な臆測が飛んでいる。その鍵を握るのがデモ処理だ。
中国民主化をめぐる米中のせめぎ合いの舞台は香港にある。
先月31日、香港の金鐘(アドミラルティー)にある占拠デモの路上では「香港民主化の父」と呼ばれる李柱銘(マーチン・リー)元民主党主席と民主派最大の香港紙「蘋果(りんご)日報」オーナーである黎智英(ジミー・ライ)ネクストメディア会長が約30分、今後のデモの在り方について討論していた。
「占拠の継続には新たなデモの結束力が必要だ」と話す黎智英氏に対して「市民の怒りはそう簡単には冷めない」と返答する李柱銘氏。黎智英氏は9月28日、警官隊がデモ隊に催涙弾87発を撃ち込んだ際、渦中にいて、涙目状態だった。
梁振英行政長官や中国メディアも、香港の占拠デモの背後に「外国勢力の関与がある」と繰り返し指弾し、最も目障りな政治家とメディアオーナー代表格がこの二人と言える。
12紙以上がしのぎを削る香港日刊紙でも中国側の圧力を恐れず、一貫して反中共・民主派支持を明確に打ち出すのは黎智英氏がオーナーの蘋果日報のみだ。デモ参加者らは熱心に読み、共通認識を得る。
7月、黎智英氏が民主派各団体や個人に巨額の政治献金をしていたとの暴露メールが匿名で香港の主要報道機関に一斉配信された。8月末、黎氏と李卓人立法会議員が香港で汚職を取り締まる廉政公署(ICAC)から家宅捜索され、民主派は「中央政府の露骨な圧力」との批判を強めている。
中国政府が「外国勢力の介入」を警戒する伏線はあった。
「香港の良心」と欧米メディアから評される穏健民主派の陳方安生(アンソン・チャン)元香港政務官が3月、バイデン米副大統領とホワイトハウスで会談し、「香港の次期行政長官選挙は中国共産党の選んだ候補しか出馬できない可能性が強い」と訴えていた。
7月、陳方氏と李柱銘元民主党主席は訪英し、クレッグ英副首相と会談。英国の対中批判を促している。
当初、占拠デモを主導していた大学副教授や牧師らが発起人だったオキュパイ・セントラル(和平占拠中環)が米国議会の影響を受ける民間団体「全米民主主義基金(NED)」の支援を受けていることが鮮明になり、中国政府は批判している。
先月31日、香港の親中派が集まる「香港フォーラム」で講演した鄭赤琰元香港中文大学教授は「占拠デモは政府転覆を目論む香港版カラー革命であり、アパルトヘイト反対運動や米国の参政権運動のような非暴力市民運動とは違う。香港は外国のスパイ基地と化し、特に米国総領事館は世界最大級の規模と人材が投入されている」と米国の介入を非難。親中系香港各紙も一斉に米国の介入を非難しているが、12日の米中首脳会談でオバマ米大統領は「米国は香港のデモの組織には一切関わっていない」と否定している。
(香港・深川耕治、写真も)











