米国の政治潮流 16年に保守派大統領誕生
2015 世界はどう動く 識者に聞く(4)
米ヘリテージ財団特別研究員 リー・エドワーズ氏(下)
――オバマ米大統領は自らの権限で不法移民に暫定的な滞在資格を与えると表明した。その背後には、最終的に不法移民に市民権を付与し、リベラルな政策を支持する有権者を増やす狙いがあるとの見方もあるが。
その見方は正しい。オバマ氏は新たな移民が福祉国家や進歩的政府の概念を受け入れ、支持することを望んでいる。これは政治的かつ思想的判断だ。
米国はあまりにも多くの移民を受け入れているが、私が憂慮するのは、彼らが米国という国を本当に理解しているかだ。リベラルな考え方しか知らなければ、彼らにより強く、より自由な米国への貢献を期待するのは難しいだろう。
――オバマ氏は米国の歴史の中でどう位置付けられるだろうか。
残り2年の任期で国内外の課題にどう取り組むかに懸かっているが、歴史家はオバマ氏を国民の大きな期待に応えられなかった大統領と見なすだろう。期待された人種問題、党派対立の改善は進まず、オバマ氏が試みた福祉国家への変革は不人気だ。海外の脅威への対応でも大きな成果を上げていない。
ただ、失敗した大統領とまでは言えない。10段階評価なら5ぐらいだろう。
――2016年次期米大統領選の重要性をどう見る。
米国にとって最も重要な選挙の一つとなるのは間違いない。
オバマ氏は自らを米国の変革者と見なし、頑(かたく)なに福祉国家を目指している。だが、オバマ氏がこうした考えを押し出すほど、支持率は下がり続け、今は40%前後だ。不支持率も50%台中盤で、米大統領としてはかなり高い。また、昨年11月の中間選挙では、米国民がオバマ氏に対し「もう十分だ。やめてくれ」という声を上げた。
次期大統領選が福祉国家、管理国家、官僚国家から脱却する転換点になることを期待している。
――野党・共和党が政権を奪回する可能性があるということか。
正しい候補者を擁立し、正しい政策を掲げれば、その可能性は高いと思う。昨年11月の中間選挙は保守派の大勝利だった。次期大統領選では共和党候補が勝つだけでなく、保守派がホワイトハウスを握る可能性は十分ある。
――オバマ氏のようなリベラル派が再び大統領になる可能性はないか。
それはあり得ない。オバマ氏は国民から拒絶されており、リベラル派候補がオバマ氏の実績を土台に選挙を戦えるとは思えない。
ヒラリー・クリントン前国務長官のような穏健派は、懸命に自分をオバマ氏から切り離そうとするだろう。
――今後の米国の保守主義運動をどう展望する。
保守主義運動はこれまで、常に進歩派・リベラル派がやろうとすることに反抗する役割を果たしてきた。
だが、保守派はそれと同時に、自由な企業活動や個人の自由、自己責任を促進するため、政府を正しい形で用いる建設的な政策を提示できるようにならなければならない。
一方で、私は中間選挙の結果と保守主義運動の現状に勇気づけられている。過去50年間で保守主義運動はより大きく、幅広く、深く、効果的になっている。これから数年のうちに、米国で保守主義に基づく変革が起きる可能性があると私は見ている。
(聞き手=ワシントン・早川俊行)





