みんなの党代表選、新体制は保守路線堅持を


 みんなの党の渡辺喜美代表が化粧品販売会社ディーエイチシー(DHC)の吉田嘉明会長から8億円を借り入れた問題の責任を取って辞任したのに伴い、同党では後任を決める代表選があす11日に行われる。「みんな喜美の党」とも揶揄(やゆ)された個人商店体質から脱皮する契機とすべきだ。

 渡辺氏の辞任で打撃

 8億円の具体的な使途はいまだに明らかにされていない。借り入れは公職選挙法や政治資金規正法に抵触する可能性がある。渡辺氏は代表辞任で幕引きを図るのではなく、今後も説明責任を果たしていかなければならない。

 昨年12月の分裂に続き、結党時からの代表だった渡辺氏の借り入れ問題が露呈したことは、みんなに重大な打撃となることは否めない。今回の渡辺氏の辞任で、離党者が出て解党する事態を招くのではないかという観測がある。そのようなことになれば、これも有権者の政治不信を増幅するもので好ましいとは言えまい。

 これまで新党が旗揚げするたびに一定の支持が集まり、過去には新党ブームに乗った政党もあった。しかし、その多くは党首の個人人気に依拠したものだった。

 細川護熙氏の日本新党、小沢一郎氏の自由党は政界再編の過程で解党し、既に存在しない。党首の人気はいつまでも続くものではなく、政党同士の合併に活路を見いだしたからだ。

 しかし、政治理念や目指すべき国家像を曖昧にした政界再編は決して成功しない。このことは新進党の解散や、民由合併した民主党の政権獲得後の党内抗争、分裂などに示されている。みんなや日本維新の会も個性的な党首の人気によって、時の政権に対する批判票を吸収しながら議席を増やした。

 これが“第三極”という政治勢力に育つか否かは、党首人気を党そのものへの支持につなげる必要があるが、比較的順調な運営をしている安倍政権を相手に難しい舵(かじ)取りを余儀なくされている。

 それが端的に表れた出来事が、昨年の参院選前のみんなと維新との選挙協力解消であり、みんなにおいて再編路線を進めようとした江田憲司氏と渡辺氏との対立や江田氏らの離党であった。

 繰り返される新党の浮沈を有権者は冷めた目で見ている。政治家が新党人気に便乗しようとしていると映れば政治不信を増すことになろう。将来、再編するとしても、まずは党再生を果たさなければ、信頼を得ることはできないのだ。

 みんなは結党の原点となった行政改革を訴える一方、憲法改正や集団的自衛権の行使容認などを主張し、昨年の臨時国会では特定秘密保護法案の修正案で与党と合意した。経済面でもデフレ脱却を優先し、消費増税の凍結を唱えた。このような姿勢は評価できるものだ。

 国会で存在感を示せ

 保守路線を主張する野党も存在して然るべきであり、国会での討論も幅が広がる。2代目の代表を中心とする新しい体制の下、みんなには存在感を示してほしい。

(4月10日付社説)