熱海土石流、続くホテル避難「日常戻って」


被災住民に一時帰宅者も、断水続くも「今は人命が優先」

 

熱海土石流、続くホテル避難「日常戻って」

行方不明者の捜索に向かう警察官ら=6日、静岡県熱海市の伊豆山地区(森啓造撮影)

 大規模な土石流に襲われた静岡県熱海市伊豆山地区では、家屋被害を免れたものの、再度の土砂崩れの懸念などからホテルで避難を続ける住民が多くいる。断水が続く中、自宅に残したペットや慣れ親しんだ町の様子を見るため、一時的に警察の規制線内に入る人も。災害発生から7日で5日目。住民は日常生活が戻るのを心待ちにしている。

 市内の「熱海ニューフジヤホテル」に4日夜から身を寄せている町内会長の高橋恒夫さん(72)は、「犬がいるから心配で」と日中は規制線内にある自宅へ帰る。「トイレが使えない。ライフラインの水がないとどうにもならない」と早期復旧を願ったが、「今は人命が優先だ」と話した。

 土砂は国道135号にある町の観光スポット「逢初橋」も襲った。市観光協会によると、橋は鎌倉幕府をつくった源頼朝と北条政子が出会った場所との言い伝えがある。同地区に30年以上住む高久喜久子さん(91)は「住民はいつも通る。最近(欄干を)塗り直してきれいになったばかりだったのに」と悲しげ。断水を経験し、「東日本大震災で被害に遭われた方々の苦労がよく分かります」と語った。

 ホテルに避難せず、地区にとどまる人も。国道沿いのスナック「しゃるまん」で寝泊まりする渡部博さん(70)は「想定外もあるかもしれないが、ここは崩れない」と話す。店は被害を免れたが、自宅前には土砂がたまっており帰れない。店の向かいに独りで住む80代男性の身元引受人になっており、「彼がまだ残っていて、置いて避難はできない。撤去作業が終わるまではいる」ととどまる理由を語った。